コラム

思いの食卓

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【秋貞淑】
春が来た―所変われば結婚式も

 真冬の或る日、友人から、結婚式の招待状が届いた。2ヶ月以上先である3月下旬のそ...

 真冬の或る日、友人から、結婚式の招待状が届いた。2ヶ月以上先である3月下旬のその日時を手帳に記し、出席確認の返信用葉書を投函しながら、韓国と日本との結婚式の段取りの違いを改めて感じた。
 結婚式というと、先ず以って思い出されるエピソードがある。1つは、イラン人の友達から聞いた話。イランでは新婦の女友達は、新婦と同じく白い服装をするという。女性の肌の露出が忌避されるので、パンツ姿かロングドレスを着るのが一般的であるとのこと。日本人の知人の結婚式に招待された彼女は、初めて出席する日本の結婚式であり、取って置きのレース付きの白いロングドレスを着て行ったそうだ。周囲の驚きの眼差しが何故なのか、その時は全く気付かなかったとか。
 もう1つは、兄の結婚式で演じた私の失態。なにがそれほど感極まったのか、式の開始と同時に涙が出てきて、その涙は段々とエスカレートしてゆき、挙句の果ては、鼻水を啜りながら式が終わるまで泣き続けた。私が新郎の妹であることを知らない列席者も多く、何か訳有りの女かなと不審がる人もいたようで、式の後、親戚一同から相当の非難を浴びせられた。
 その後、幾つかの結婚式に出席してみて分かったことだが、それは、兄妹愛などから来る感無量なんかではなく、結婚式が醸し出す厳粛な雰囲気に弱い我が感性の成すワザであった(むろん、兄の時ほどではないが)。
 さて、時の経つのは早く、もう3月に入り、友人の結婚式ももう間もなくである。冒頭で言った韓国と日本との段取りの違いは何なのか。式の流れを見てみると自ずと頷けるはず。
 一概には言えないだろうが、一般的であろうと思われる韓国の結婚式を紹介してみる。
 まず式場は、宗教を持つ人は、それぞれ教会や寺などで式を行うが、宗教のない人などは、専門の結婚式場を利用する。
 日本同様、招待状は送るが、招待状と関係なく誰でも祝いたい気持ちがある人は式および宴会に出席できる。なので、韓国では「招待客」と言わず、「賀客」という。自由な出席であるので、日本みたいな出欠の確認は不要であり、引き出物という慣習もないので、大まかな人数の予想で済む。
 賀客は、式場に行き、当人やその両親と挨拶を交わし、そこで祝儀を納め、式に出席する。式が終わると新郎新婦は別室に移動し、親戚との挨拶の儀式を行う。これには親戚のみが参加する。賀客は、式場付近の指定のレストランへ行き、飲食と歓談を楽しむ。レストラン側には、メインの食事と飲み物を頼むだけにして、お餅・キムチ・チャプチェなどの祝い料理は、両家がそれぞれ用意して運んでくる。
 式もそうだが宴会にも賀客の出入りは自由であり、中には一家総出で来て思いっ切り栄養補充をする人もいるし、時には、お腹を空かした通り掛かりの人が紛れ込んで食べることもあると聞く。1時間ほどすると儀式を終えた新郎新婦が挨拶に来る。宴会は2、3時間で終わる。帰り際には、祝い料理を分け合うこともよくある。これで一連の結婚式は終わることとなる。
 結局、日本との一番大きい違いは、招待客か賀客か、つまり、披露宴なのか宴会なのかにある。
 生真面目かつ几帳面な日本人と気ままかついい加減な韓国人の国民性の違いが、結婚式にもそのまま反映されているのであろう。

(2008.03.07)