望ましいこととは言えないかもしれないが、韓国の男の人には、兵役の義務がある。心身の障害をはじめ、免除に該当する諸規定があり、「運よく」もしくは「頑張って」その義務を免れる場合もあるが、大多数の男の人は、19才から30才までのうちの2年間を軍人として過ごす。
若者たちは、自分の現状や将来などを考慮し、入隊の時期を早めたり延ばしたりするものの、一般的には、成人男子になるための通過儀礼とも言えるその義務を、社会人になる前に果たす。
大学生の場合、大学2年生頃入隊をし、兵役を終えてから復学し、将来の進路を視野に専攻を選ぶことが多く、大学3、4年生の講義室には、男の子というよりオジサンの雰囲気を帯びる男子学生が目立ってくる。
特に、私の大学生の頃(30数年前)は、その義務が丸3年に及んだので、同じ学年ながら復学組のオジサンには敬語を使った覚えがある。
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むろん親の強要だけではなく、目から離れると気持ちも離れることは往々にあり、女の人自身の「恋醒め」や「心変わり」もなくはない。秋の空のような女心は古今東西を問わずいくらでもあり得る。
しかし、問題は片方が身動きの取れない兵営にいることだ。わざわざ「別れの通告文」を出して傷付けることより、「無言」を貫き自ら事態を悟るようにと思う彼女のほうが多く、軍人になった彼たちは、彼女からの手紙や面会を待ちつつ、なお、外出ができる休暇日を待ち続ける。
私自身は、入隊を控えた男の子と付き合ったことはないが、嫌いな科目のレポートを代わりに準備してくれるなど、学業の色々な面倒をみてくれる付き人のような同級生がいた。その子が入隊した時、友情めいた手紙一通出そうとせず、次の付き人役の物色に余念がない薄情ぶりであったので、女心が分からなくはない。
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さほどもてなかったせいだろうか、それともひもじい思いをしてきたせいだろうか、夫は、そもそも「花より団子」の人。入隊してすぐは、軍隊の食事が口に合わず食べられない人が多いなか、彼は美味しくてしょうがなったと言う。ただ、おかわりができないことが残念だったとのこと。
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休戦状態の分断国家である韓国が軍隊を持つこと自体は止むを得ないことだろうが、徴兵制については色々な議論がなされている。
ともあれ、韓国の男の人は、その青春の一ページに、多くの国の若者たちが味わずに済む大変さを刻むことになる。