我が家に子犬がやってきました。ミニチュア・ダックスフントのメスです。胴長・短足の体型がかわいくて、ペットショップで見た瞬間に家族の一員に迎えることを決めました。
「1回目の予防注射が終わったら引き取りに来て下さい」と店員さんに言われ、それまでに名前を考えることにしたのですが、これがなかなか決まらない。家族全員で1週間考えて、投票の結果、ようやく「めい」に決まりました。名前が決まったことをペットショップに報告すると、ケージに名前を貼り出してくれるだけでなく、ホームページでも紹介してくれます。他の子犬たちの写真と見比べながら、「やっぱりうちの子が一番かわいい」などと早くも親バカぶりを発揮。妻はホームページで犬の飼い方を調べ始めました。そして、いよいよ「めい」を引き取りに行く日がやってきました。
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ペットショップに行くと、赤いスカーフをつけ、ピンクのトレーナーを着た「めい」がいました。
店員さんから餌のやり方、トイレのしつけ方、シャンプーの仕方など一通りの説明を受けながら、これは大変なことになったと思いました。実は私が犬を飼うのは実に33年ぶりで、餌にしても用具にしても選択肢が広がっていて隔世の感がありました。たとえば餌は複数のメーカーが犬種ごと、成育ステージごとに成分や粒の大きさの違う製品を出していて、ペットショップの棚にずらりと並んでいました。
どれを選んでいいのか迷っていると、「めいちゃんは、この餌を食べていたのですよ」と店員さんがアドバイスしてくれました。とりあえずアドバイスに従って、「めい」がそれまで食べていたブランドの餌(ダックスフントの子犬用)を購入。その他に、「めい」が寝起きするサークルと呼ばれる檻やトイレが入ったスターターセットにシャンプー用具も買い込みました。「めい」を引きとって帰るつもりが、とんだ大荷物になってしまいました。
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私が中学1年生の時に父がもらってきた子犬は、いとこの家で生まれた仔犬で、雑種らしい謙虚さとたくましさとを持ち合わせていました。南向きの軒下に犬小屋をあてがわれ、散歩に出る時以外は日がな一日昼寝をしていました。暑い夏の日には、土を掘ってその上に寝そべって体を冷やし、風の強い冬の日は小屋の中でうずくまっていました。母の作る猫まんま(だしを取った後の煮干をご飯にかけて薄い味噌味をつけたもの)を一日一回もらって満足していました。
当時、ドッグフードもあるにはあったのですが、あまり好んで食べなかったと記憶しています。予防注射は保健所が巡回で実施している狂犬病のワクチンだけ。それでも大病もせず健康に過ごしていました。最近の犬たちは5種混合ワクチンや7種混合ワクチンなど複数の病気の予防注射を打っているのだと、「めい」を飼うようになって知りました。ペットの世界も過保護になっているようです。