今年、ピンクレディー(Pink Lady)というりんごを初めて食べました。オーストラリアで開発された「クリスプピンク」という品種で、「ピンクレディー」は商標名です。日本ではまだ試験的にしか栽培されてないそうですが、知人の紹介で5kgを1箱注文しておいたのが宅急便で届いたのです。届いた箱を見てびっくりしました。箱全体がピンク色だったからです。しかもショッキングピンクのハートに英語でPink Ladyという文字が白抜きされたロゴマークまで印刷されているではありませんか。
これまで何度もりんごを箱で買いましたが、こんなにインパクトのあるパッケージは無かったでしょう。早速、箱を開けると一番上にピンクレディーの説明が書かれたパンフレットが入っていました。農作物のパンフレットというと栽培した農家さんの笑顔の写真というのが定番になっていますが、ピンクレディーのそれはまったく違います。「恋人たちのりんご」というキャッチフレーズと恋人同士とおぼしき男女の写真。このりんごを食べると「なんだか幸せになれそうな気がする〜。」感が満々です。これは期待できそうだと思いました。
取り出してみると、やや小振りで桃色がかった赤色のかわいらしいりんごでした。この外観から、ピンクレディーという名前が付けられたのでしょう。香りはさわやかで、食べてみると果肉は硬めで、酸味のきいており、しかも甘味があります。同じく酸味の強い紅玉とは果肉の食感と香りが違いました。玉が小ぶりなのと酸味のおかげで、まるまる1個、ぺろりと食べることができました。今までりんごをまるまる1個食べるとおなかが一杯になってしまうというイメージがありましたが、ピンクレディーはみごとに裏切ってくれました。
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オーストラリアで開発されたこのりんごを日本で栽培しているのは日本ピンクレディー協会の農家さんたちです。世界中で同じような生産者の協会が作られ、栽培の権利を持っているApple and Pear Australia Limited (APAL)という会社に、苗木生産と商標使用に対し一定の使用料を支払うシステムになっています。個人で勝手に苗を作ることも、果実を生産販売することもできません。生産農家はAPALと栽培契約を結び、日本ピンクレディー協会の会員になる必要があります。会員は生産者が17名、試験栽培者が17名、苗木生産者が1名の計35名だそうです。
オーストラリアで生まれた新しい品種の栽培は容易ではないと思いますが、そんな苦労話はおくびにも出さず、消費者に向けては「恋人たちのりんご」という切り口でプロモーションしているところが斬新です。従来のりんごの置き換えではなく、他の食品をも視界に入れて、新しいポジションを作り出そうとしている意図を感じます。日本ピンクレディー協会の農家の皆さん方も、APALのアプローチに今までにない新しさを感じたのだと思います。この取り組みは、生産から販売まで連携しなければ難しい農作物のブランディングの、ひとつの成功事例になるのではないかと期待しています。