コラム

消費者の目

一覧に戻る

【花ちゃん】
仏像ブーム

 仏像がブームです。それも若い女性の間でブームなのだそうです。もう終わってしまいましたが、東京国立博物館の阿修羅展には多く来場者が詰めかけ、90分待ちになっていると妻が教えてくれました。彼女は私の仏像好きを知っているので、私が長い行列に並んで阿修羅像を見るのかどうかに興味があるようです。その時には、「90分はちょっと待てないかな」と言いながら、実はこっそり見に行ったのでした。

 仏像がブームです。それも若い女性の間でブームなのだそうです。もう終わってしまいましたが、東京国立博物館の阿修羅展には多く来場者が詰めかけ、90分待ちになっていると妻が教えてくれました。彼女は私の仏像好きを知っているので、私が長い行列に並んで阿修羅像を見るのかどうかに興味があるようです。その時には、「90分はちょっと待てないかな」と言いながら、実はこっそり見に行ったのでした。

                          ◇        ◇

 20数年前、大学の恩師が企画してくれた奈良旅行で初めて興福寺の国宝館を訪ね、阿修羅像に出会いました。 ガラスケースの中に納められた阿修羅像は想像していたよりも華奢でしたが、その表情には悪に立ち向かう強い決意がありました。同時に何とも言えない哀しみをたたえており、これは女性に人気があるのも無理はないなと思ったものです。京都の三十三間堂にも阿修羅像がありますが、こちらは強面で武人然としたところがあって、女性にもてそうな感じがしません。やはり阿修羅といえば興福寺の阿修羅像というイメージです。

                          ◇        ◇

 和銅3年(710年)、興福寺の前身である飛鳥の厩坂寺は、平安遷都の際に藤原不比等の計画によって現在の場所に移されるとともに興福寺と名付けられたということです。
 平成22年は平安遷都1300年記念の年にあたり、興福寺は境内整備をすすめて中金堂の復元に取り組んでいます。私が興福寺を訪ねた3月下旬には阿修羅像はすでに東京に移送されており、国宝館ではそのお姿を拝見することはできませんでしたが、それぞれ左肩と頭上に灯篭を載せた天燈鬼と龍燈鬼が迎えてくれました。中金堂の再建の費用を工面するために阿修羅が一肌脱いだのかどうかは分かりませんが、興福寺の阿修羅像を東京で見ることができるのは本当にありがたいことです。
 今回の阿修羅展のみどころは、幻想的な照明に浮き上がる阿修羅像を、360度あらゆる角度からガラスケースなしで観てもらおうという大胆な展示方法だと思います。
 興福寺の国宝館では阿修羅像を正面からしか見ることができなかったので、裏から見ると一体どのように見えるのか興味津々。とうとう、上野の森に足を運びました。

                          ◇        ◇

 展示室内に入るとやや暗めの室内のお立ち台に阿修羅が立ち、照明によってその憂いを帯びた表情が一層引き立っていました。私は閉館30分前に入館したのであまり混雑しておらず、存分に阿修羅像を鑑賞することができました。阿修羅像に見とれる人、思わず手を合わせる人など周囲の反応は様々でしたが、私は阿修羅像が見てきた1300年という時間の中で、20数年を共有できたことに感動しました。
 阿修羅展の混雑ぶりはテレビのニュースでも取り上げられ、待ち時間がわかるモバイルサイトも用意されていました。阿修羅のシルエットがプリントされたTシャツをはじめ阿修羅グッズの売れ行きも好調だったとのことで、東京の阿修羅展は大成功。興福寺の中金堂の再建に大きく貢献できたのではないでしょうか。7月中旬から福岡で公開です。東京からも阿修羅像の追っかけ仏像ギャルが詰めかけることでしょう。

(2009.07.03)