千葉県富里市といえば、スイカの産地として有名です。この富里市やJA富里市が後援するスイカロードレースは今年で26回目。スイカマラソンの愛称で親しまれていて、小中学生は3km、高校生以上は5kmか10kmを年齢別に分かれて走ります。このレースの目玉は何と言っても富里市産のスイカです。
レース中は大量の汗をかくため、水分補給のための給水場が途中に何か所も設けられるのですが、富里のスイカマラソンでは通常の給水場に加えて給スイカ場が設けられます。この給スイカ所でスイカを味わうことができるほか、完走後にもスイカが食べ放題です。毎年3000玉以上のスイカが用意されるそうです。
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スイカの収穫時期にあわせて6月下旬に行われるので、走るには少し気温が高いのですが、それがまたスイカのおいしさを引き立てます。がむしゃらにタイムを競うのではなく、富里の田園風景を楽しみながらゆっくり走ろうという大会なので、幅広いランナーに人気のある大会となっています。
富里スイカマラソンの会場は決して交通の便が良いとは言えない場所です。最寄りの京成成田駅からは10km近く離れています。大会会場まではシャトルバスが運行されていますが、バスの利用者が多いため乗り込むまでにずいぶんと行列しますし、道路の渋滞に巻き込まれると会場まで40分以上かかることもあります。自家用車は付近の道路が混雑するため避けたほうが無難ですが、私の友人はわざわざ会場から遠い駐車場に車をとめて、そこから折りたたみ自転車で会場にやって来ました。こんな思いをしても多くのランナーがこのレースを走りたがるのはなぜなのでしょうか。
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大会会場にはスイカのアドバルーンが上がり、隣接している富里市役所の玄関前の巨大なスイカのモニュメントが目を引きます。市をあげてスイカを応援するぞという意気込みが伝わってきました。選手受付のテントの後ろには完走後に振舞われるスイカの箱が積まれています。JA富里市のスイカ直売場では早くも試食のスイカが配られていました。「早く走り終えてスイカをお腹いっぱい食べたい」と心から思いました。
直売所のスイカやトウモロコシを見ているうちにスタートの合図。道が狭くペースが上げられないので自然とゆっくり走ることになります。応援の皆さんとの距離が近いのも魅力です。市街地を抜け、工業団地も抜けるとやがて田園風景が広がります。畑の前では近所の皆さんが応援してくれました。赤ちゃんを抱いたお母さん、子供たち、おじいちゃん、おばあちゃんまで延々と続くランナーの列に声援を送ってくれました。走ることがこんなに楽しかったとは。
ラストスパート前に給スイカ所で一切れ。ゴール後には食べ放題で好きなだけスイカを楽しむことができました。スイカは走った後のカラダには最高の水分補給源。冷やしていないスイカがこれほどおいしいと思ったことはありません。レースに参加したランナーは「富里のスイカ」のおいしさを心から味わったことでしょう。マラソンとスイカという組み合わせの妙もさることながら、何よりも富里市の皆さんの温かい声援とスイカを食べてもらいたいという熱意がランナーを感動させるのだと思います。