8月の上旬、たまたま愛媛県松山市に用事があったので、今治市まで足を延ばして、しまなみ海道のサイクリングを楽しむことにしました。愛媛県今治市と広島県尾道市を島伝いに結ぶ西瀬戸自動車道は、「しまなみ海道」という愛称で親しまれています。途中の大島・伯方島・大三島・生口島・因島・向島はそれぞれ美しい橋で結ばれており、そこを走る自動車専用道路に並行して自転車専用道路が併設されています。まるで海の上を走っているような気分を味わうことができるので、サイクリストや自転車愛好家に人気の高いルートになっています。
今治市から尾道市までの全区間を走ると70kmほどのしまなみ海道ですが、レンタサイクルのターミナルが14カ所設置されており、途中のターミナルで乗り捨てることもできます。体力に合わせてサイクリングを気軽に楽しむことができますし、途中の島で宿泊するなど自転車移動を旅程に組み込むことが可能です。また、利用料金が1日あたり500円と安いのも魅力です。私は今治市のサンライズ糸山ターミナルに夕方到着し、そこで自転車を借りました。その晩は今治市内に宿泊し、明朝早く出発。しまなみ海道を通って尾道市に行き、駅前ターミナルで返却するというプランです。
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照りつける夏の日差しを避けるため、朝4時半にホテルを出発した時には、辺りはまだ暗くて、自転車のライト無しには走れない状態でした。昨日タクシーで乗り付けたサンライズ糸山までの上り坂をなんとか登りきると、夜が白々と明けてきました。ここからがいよいよしまなみ海道のサイクリングの始まりです。サイクリング道路は良く整備されていて、案内板通りに走れば道に迷うことはなさそうです。これなら夕方までには尾道に着けるでしょう。
しまなみ海道の島々をつなぐ橋は、そこからの眺望はだけでも十分楽しめますが、島の中の一般道を走るのもこのサイクリング道路の大きな楽しみの一つです。一般道といっても車道ときちんと分けられており、安全に走ることができますし、時々すれ違う島の人たちも挨拶を返してくれ、笑みを浮かべながら手を振ってくれました。ターミナルで休憩していると話しかけてくださる方もいらっしゃいました。
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道路は大部分が海岸線に沿って走っており、普段は見ることのできない瀬戸内海の潮の流れを間近に見ることもできました。穏やかで波一つないイメージの瀬戸内海ですが、意外なほどに潮の流れが速く、この辺りの海流に詳しかった村上水軍が、海戦では圧倒的な力を持っていたのもうなずけます。
スピード優先の時代ですが、ゆっくり走ると普段は見えなかったものが見えてきますし、人々との交流も生まれます。道路というインフラがなければ始まりませんが、それに加えて人々の温かいもてなしの心が感じられたからこそ、旅が楽しくて充実したものになったのだと思います。しまなみ海道は機会があったらまたゆっくり走ってみたい場所になりました。