私は長崎生まれで、ちゃんぽんに目がありません。ちゃんぽんは、明治の中頃に長崎の四海楼という中華料理店のご主人が、中国人留学生に安くて栄養があって美味しいものを食べさせようと考案したとされています。たっぷり野菜に肉や魚介類と具沢山で、豚骨と鶏がらのスープが唐灰汁というかん水で製麺した太目のちゃんぽん麺によく合います。
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長崎ちゃんぽんを全国的に有名にしたのは、リンガーハットという長崎発のチェーン店で、この事業を始めた1974年には「長崎ちゃんめん」と称していました。「長崎ちゃんぽん」の本場で埋もれないよう、あえて一捻りした名前にしたのではないかと私は思っています。すでにブランディングの何たるかを理解していたのではないでしょうか。
1982年に株式会社リンガーハットに商号変更し、「長崎ちゃんぽんリンガーハット」として店舗を増やしていきました。全国に打って出るには、「長崎ちゃんぽん」というポジショニングが有利だったのでしょう。2012年8月31日現在、38年かかって全国に505店舗、ホノルルなど海外に7店舗を展開するまでになりました。
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リンガーハットは、ご当地グルメとしては最も成功している事例のひとつでしょう。この店をちゃんぽんを食べると、その変わらぬ味に、青春時代を過ごした長崎の街を思い出します。全国で成功できた要因は、栄養があって美味しいものを安く提供したいという考案者の想いに共感し、しっかりと守り続けているからではないでしょうか。