コラム

吉武輝子のメッセージ JAの女性たちへ

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【吉武輝子】
年齢を超えた女たちの同窓会

 昨年の末に、ミネルヴア書房から「おんなたちの運動史―わたくしの生きた戦後」を...

 昨年の末に、ミネルヴア書房から「おんなたちの運動史―わたくしの生きた戦後」を世に送り出させていただいた。とたんに「吉武輝子出版記念実行委員会」が結成された。実は「女人吉屋信子」「ブルースの女王淡谷のり子」「炎の画家三岸節子」「置き去り―サハリン残留日本女性の六十年」と四回びっくり出版パーティをプレゼントしていただいている。「置き去り」から1年半もたっていない。
 「1回も出版記念パーティをしていない人もいるのに、5回も人様をお騒がせするなんて、恥ずかしいよ」とひたすら辞退するわたくしに、「吉武さんはダシ。どんどん世の中悪くなってきて、『女は生む道具』なんて発言が堂々と閣僚の中から出てくるようになった。みんな一生懸命に平和と平等を根付かせようと頑張ってきた女たちがみんな集まりたがっているのよ。怒っているのは自分だけじゃないって確かめるために」と即座に辞退は却下されてしまった。わたくしはやせっぽっちである。「鳥のガラはダシが出易いからな」と大いに納得して引き下がった。間もなく「実行委員会」から「案内状」が届いた。
 「吉武輝子さん出版記念パーティのご案内
 このたび、吉武輝子さんが『おんなたちの運動史―わたくしの生きた戦後』を出版されました。これを機会に年齢を問わない『楽しく元気の出る同窓会』を開きたいと思います。
 山田邦子さんの司会のもと、呼びかけ人の熱いメッセージ、岩崎加根子さん、高田敏江さん、竹下景子さんによる朗読や、新谷のり子さん、ラテン歌手の坂田早苗さんたちが歌の花束を贈ります。
 吉武輝子さんの出版記念に名をかりて、女たちの連帯と平和を求める新たな出発の日にしたいと思います。
 どうぞ、みなさまご参集ください。心からお待ちいたしております。
呼びかけ人一同」
 呼びかけ人は90歳の秋山ちえ子さんを筆頭に40人近い人たちの名前が列記されている。
 日時は2007年3月16日。場所は目黒にある東京都庭園美術館。

 体調を崩し2月半ばから9度近い熱が続いていたが、あいにく地方講演が続き、崩れそうになる身に鞭打って律儀に約束事を果たしつづけたところで、3月13日に緊急入院となってしまった。パーティ当日は40度の熱をおして病院から会場入りした。なんと同窓会には300人近い女たちが集まった。長い間平和と平等を目指して共に活動してきた女たちは、抱き合い、手を握り合い、互いに一人ぼっちではない、女たちの志の高さと擦り寄らない潔さを確かめ合い、会場は女たちの熱気でむんむだった。40度の熱なんかどっかに吹っ飛んでしまった。
 最後はわたくしが26年間顔の役を務めてきた「戦争への道を許さない女たちの連絡会」の中から育った「グループどくだみ」の女たちの
 「戦争のためにはなにひとつ力かさない。戦争のためにはわたしの力貸さない」
というシンプルで力強い歌を300人近い女たちが、祈りを込めて熱唱した。何と40度の熱のあるわたくしが舞台で歌い踊って、女たちの連帯のより強くあるようにとエールを送りつづけていたのである。女に生まれたことの最高の幸せを確かめながら。

(2007.04.27)