ほんとうにまる3日間祈り続けていましたよ。だって出自ノラのミーが行方不明になってしまったのですもの。
13年前に、我が家から歩いて20秒の所に住んでいる実妹のひとり娘が飛んできて「輝子さん、車にはねられた子猫を助けたんだけど、何とか助けてやって」と涙ぽろほろ。それっと飛んでいくと玄関のあがりまちに置かれた段ボールの中で子猫がぐったり。姪と一緒に段ボールごと動物病院に連れて行くと、頭の中の骨が折れていて、右目が失明。最初の頃は何度もてんかんの発作を起こしていましたが、気がついたら13歳になっていたんです。
ミーは人間好きの猫嫌い。我が家は袋小路の一角にあるので、もうみんな道の真ん中でのびのび。ミーはご近所の方が「ミーちゃん」と呼んでくださると、ほんとうに愛らしい声で「みゅう」って返事するんです。だから路地裏のアイドルちゃんです。我が家には出自ノラの猫が7匹いるのですが、個性が見事に7通り。人間も世間様に帳尻あわせをしないで伸びやかに生きていたら、もっともっと個性的な存在でいられるだろうになと、猫の伸びやかさが羨ましくなってしまうんですよ。
2週間ぐらい前にわたくし寝るときに窓のカギをかけ忘れちゃったんです。朝起きたら猫全員が外に出ちゃっていたのですが、みんな玄関から入ってきたのですが、ミーは影も形もなし。ミーは白の頭と肩としっぽが黒。お腹には茶色が入っているので珍しい男の三毛ちゃんなんですよ。兎も角障害があるので路地から出したことがないんです。丁度、読売新聞のペットシリーズに、わたくしの文章が写真付きで掲載されたばかりだったので、ミーの写真を切り抜いてあちこちに迷子猫のお知らせをとのチラシを貼らしていただいたんですよ。
地域家族の廣長家では3人のお子さんと地域娘の美貴さんたちが朝昼晩探して歩いてくれたんです。でも二晩音沙汰なし。3日目には雨が降り出してきたんです。
夕方、心配してたら母と娘のお2人が、ミーを我が家に連れてきてくださったのですが、娘さんが帰宅する途中、道路の真ん中でミーが倒れて娘さんの顔を見たとたん「みゅう」って助けを求めたみたい。
娘さんは猫嫌いなんだそうですが、目の前で自動車が急停車するのを観て、車にひかれるのは時間の問題だろう。翌日死体を観たら後悔するだろうとぐっしょり濡れたミーを抱いてうちに連れ帰ったんですって。そしたら母上が「迷子猫のチラシが貼ってあったけど写真の猫そっくり」とタオルで抱いて、2人でチラシの写真と付き合わせて、間違いないと言うことで連れてきてくださったんです。
わたくしの家から歩いて5分ぐらいの清水さんと以来仲良しになってしまったのですよ。「吉武さんは猫派ですか」と聞かれたので「猫派でもあるし犬派でもあるし。だけど人間が一番好き。ことに命へのいとおしさが、ダントツ」と応えたら「あらわたくしと同じ」と握手を求められてしまいました。ミーは3日間の家出のトラウマなのでしょう。鳴いて鳴いて、だから一晩中抱いているんです。「疲れるでしょう」と地域娘が連れに来てくれるのでほっ。地域家族もやっぱり「命へのいとおしみダントツ組」。猫のおかげで地域に命のいとおしさのつながりの輪が広がる一方なんです。