コラム

吉武輝子のメッセージ JAの女性たちへ

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【吉武輝子】
次世代に平和な社会を

 もう定年退職したのですが、15年ばかりの間中央大学法学部で女性学の前期13回を受け持っていたのです。
 なんと男子学生も女子学生も毛穴から寄る辺のない孤独感をにじませていたではありませんか。いろんなかたちで関わり合っていくうちに、何故学生たちが毛穴から寄る辺のない孤独感をにじませているのかだんだん分かってきたのですよ・・・。

 もう定年退職したのですが、15年ばかりの間中央大学法学部で女性学の前期13回を受け持っていたのです。
 なんと男子学生も女子学生も毛穴から寄る辺のない孤独感をにじませていたではありませんか。いろんなかたちで関わり合っていくうちに、何故学生たちが毛穴から寄る辺のない孤独感をにじませているのかだんだん分かってきたのですよ。
 人間て誰もが1、2の3と一緒に生まれてくるわけじゃないですか。ある学生に「先生は1931年生まれなんですね。うちのおばあちゃんと一緒だ」と言われたときは腰を抜かしそうになってしまいました。でも考えれば入学する学生の年齢はどんどん若くなってくる。その分だけわたくしは後期高齢者になってくる。お互いに過去の歴史という共通点がなかったら、通じ合う言葉が無くなって孤独になるのはわたくしの方。
 わたくしたちはしっかりと現代史を学んだ。現代史を学ぶと過去の闇がぐんぐんと薄れて今自分が立っている現地点が分かってくる。現地点が分かってくると将来どのように生きていくかという未来志向が生み出されてくるのです。

 ◇    ◇

 最近の若者たちは受験勉強と銘打って歴史は明治維新までしか学んでいないんですよ。
 何度も登場していますが、わたくしの家の斜め前に5人家族の廣永さんという地域家族がいるのですけれどもね、長女の桃香ちゃんはちょっとあわてて生まれたので昭和生まれ。2人の弟は平成生まれ。だから「化石、化石」とからかわれていますが、わたくしと桃香ちゃんは同じ昭和生まれでも40年以上差がある。桃香ちゃんよりも、わたくしの方がしっかり現代史を学んでいる。だから現在地点を見極めかなり明確な未来志向を育て上げることができたのです。
 それにしても何故今の若者たちが現代史といっても入口の明治維新止まりなのでしょうか。あのね、現代史、ことに戦争の世紀の現代史は政治の誤りが否応なく浮き彫りにされてくる。そうなると、学んだ若者たちは、ごく自然に政治に対する批判精神が身に付いてくる。国民の批判精神ほど国にとって厄介なものはない。戦前だって国民一人ひとりに、批判精神があったら、あんなに沢山の軍人と市民が犠牲になんかならなかったはずですもの。
 故意に現代史を学ばせないという国の意図が分かってからはわたくし、断固として現代史の語り部になることに決めたんです。わたくしの戦後は、進駐軍の集団性暴力からスタートしたこともきちんと語ってね、戦争と性暴力は単に男と女の問題ではなく、男の人権が踏みにじられているから、弱い立場の人間の人権を踏みにじる悪循環の結果だってことをめんめんと語るとね、みんな身体を乗り出して聞き入っていたんですよ。
 わたくし今度の選挙の結果を見たとき涙が出た。この国を戦争の出来る国にしようとする勢力を強めさせている次世代に思いやりのない大人たちの歴史観不足に、本気になって泣いてしまったんですよ。
 歴史の語り部になると今の政治のあり方にも敏感になる。ねぇ次世代に平和な社会を引き渡すために、現代史の語り部になりましょうよ。

(2010.07.30)