コラム

吉武輝子のメッセージ JAの女性たちへ

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【吉武輝子】
病んでも老いても人生は華

 もうこの30年間、病気のデパートのオーナーとして門戸を張ってきたが今年の1月頼みもしないのに新商品が納入されたじゃありませんか。
 突然意識不明になり気がついたら病院の集中治療室。

 もうこの30年間、病気のデパートのオーナーとして門戸を張ってきたが今年の1月頼みもしないのに新商品が納入されたじゃありませんか。
 突然意識不明になり気がついたら病院の集中治療室。検査の結果慢性白血病。正しくは慢性骨髄炎で、白血球の序列が変化するという狭義に言えば遺伝子病。わたくしの場合は白血球の序列が3段重ねになっていたのだとか。ありがたいことに昨年の9月に白血球の序列を正規に戻すグリベックという新薬がアメリカで作られ、今年の1月の半ばに厚生労働省が新薬の使用を許可したのである。
 9月以前は慢性骨髄炎が発見されても、骨髄移植しか打つ手が無く、生存率は6%とまことに低かった。
 「輝子さんは自分が死ぬかも知れないという不安を持ったことがない。その生命力が病魔を追っ払って、これまでも死線をくぐり抜けてきた」と看護師の娘が言ったことがあるが、今回も新薬がずばり効いて3ヶ月後に無事退院。週1回の通院が今では一月半に1回になるまでに、血液検査の結果が健康な人並みになっている。担当医がデータを見た瞬間、「助かるとは思わなかった」と思わず口走るほどどうやら素晴らしい回復力だったらしい。
 退院後すぐに参議院選があったが、携帯用酸素ボンベを引っ張って護憲派の候補者の応援に駆けめぐった。
 後期高齢者になると肉体に引き算の部分がいっぱいできてくるが、前にも書いたが学習能力だけは使えば使うほど益々開花して行く。だからわたくしは高齢期に入って俳句を始め筆禅道という立って複式法で書く書道をはじめ、心優しい音色のミュージックベルをはじめた。生命力を燃え立たせるために、句会に参加し、筆禅道の稽古を再開し、ミュージックベルのレッスンもはじめた。
 実は3年前に格差社会の中で弱者に追い込まれている高齢者や心身障害者はフリーターの若者たちに、「ねえ少し怒ろうよ、みんなで手をつなごうよ」と言うメッセージを語りや朗読で送りたいと願って、竹下景子さん、クミコさん、岩崎加根子さん、高田敏江さん、古今亭菊千代さん、深野弘子さん、自称座長のわたくし吉武輝子で「ななにんかい」を立ち上げ、昨年は山形の庄内の響きホールで、素晴らしい公演会を開かせてもらった。今年は東京公演で代々木上原の白寿ホールで11月2日と決まった。
 言葉ばかりでは聞く人も疲れるので、真ん中にわたくしのミュージックベルを挟んで、休憩と言う段取りになっている。そんなことで1ヶ月前からレッスンをはじめたのだが、「アメージング・グレイス」「世界の中の一つの花」「秋冬メドレー」を半年以上振っていないので、初めてのレッスンの日は、どきどきものだったが、驚いたことに入院中も頭の中でベルを振っていたのだろう。若き師の秋田智子さんがびっくりするぐらい、華麗な音色で振っていたのである。改めて、退院後の暮らしを生きて甲斐あるものにするのは、好奇心に満ちて新しい分野に足を踏み入れることだと痛感したのである。東京公演の当日は深紅のアオザイを着ようとわくわくしている。ねぇ、申込先はFAXで、03-3302-3766吉武宅。切符代は2千円。人生を華にするお仲間に入ってくださいよ。生命力を分かち合ってうんとこさ長生きしましょうよ。

(2010.09.30)