コラム

吉武輝子のメッセージ JAの女性たちへ

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【吉武輝子】
人間の傲慢さ

 日本始まって以来の大震災、大津波の後は、原発の事故騒ぎで、このところ頭の中が真っ白けになりっぱなしになっている。
 1977年女性解放や様々な運動の人たちに押されて、参議院の最後の惨酷区と言われた全国区に革新無所属として立候補した。立候補したというよりはさせられたといっていい・・・。

 日本始まって以来の大震災、大津波の後は、原発の事故騒ぎで、このところ頭の中が真っ白けになりっぱなしになっている。
 1977年女性解放や様々な運動の人たちに押されて、参議院の最後の惨酷区と言われた全国区に革新無所属として立候補した。立候補したというよりはさせられたといっていい。
 「効率が悪い」と反対する人たちもいたが第一声は、前泊して沖縄の那覇で行った。沖縄を切り捨てたところで平和憲法が存在していることを申し訳なく思う思いが強かったからである。
 選挙のスローガンは「後始末の出来る政治を」反自民、反安保、反原発の三本柱。
 1975年新潟県の巻町、今は新潟市に編入されているが、町議会で原発の導入を決定した。貧しい町は過大な助成金に心が動いてしまうからだろう。しかし町民の中には地道に反原発運動を続けてきた人たちがいた。お金よりも命、暮らしが大切だと反対したが、町議会は議会民主主義への挑戦と突っぱねた。反対運動は粘り強く続けられ、町長リコール運動に成功した後、住民投票で原発導入を阻止させたのである。新聞は「地域エゴ」と書き立てたが正しく言えば地域エゴは東京そのものである。危険なものは過疎地に押し付け電力の恩恵だけはたっぷりと味わって暮らし続けているのですもの。
 「反原発」で選挙を戦ったわたくしも、実はタップリと恩恵の中につかり続けてきたではありませんか。
 考えてみたら寒い時は寒くてよろしい。暑い時は暑くてよろしい。それなのに寒い道を歩いて電車に乗ると暖房で汗がぬるぬる。新幹線やデパートに入ると冷房で上着はおらないと寒くてぶるぶる。オフィスも背広を着た男性に合わせて冷房ガンガン。冷房病に罹る女性がごまんといるじゃないですか。暮れになると木に豆電球を巻きつけてぎらぎらピカピカ。それを見るたびに夜眠ることのできない木々の寿命が短かろうと。一度人間が一晩中豆電気を体に巻きつけてみやれと人間の自然に対する優しさのなさに心底腹が立ってしまうんですよ。福島の原発が末期的症状になってからというもの、東京の街も適度の暗さがよみがえってきたのです。
 テレビで原子炉の損傷の報道をしているのを聞いていると東京電力も中部電力もそして政府も原発の構造の知識がいかに乏しいかが露呈され、改めて自然のエネルギーを過小評価している人間の傲慢さにおののいてしまうのである。
 農業も漁業も自然の恩恵をたっぷりと頂戴している。しかしあの津波の獰猛さをテレビで見ていると、自然のエネルギーの獰猛さにただただおののき恐れている。チェルノブイリもそうだが原発を作るときには、自然のエネルギーの獰猛さを過小評価して人間の制御できる枠の中に閉じ込めてしまっているのではないか。想像力不足というよりも傲慢さのなせる業と言ったらいいのではないか。
 農業も漁業も原子力のおかげで命の糧にならない恐れがある。
 JAの女性のみなさま。どうかどうか命の糧に携わる仕事があらゆる仕事の上位に置かれるようなそんな社会を作っていきましょうよ。そして便利よりも命暮らしを優先させる社会を次世代に残していきましょうよ。
 暑い時には暑い。寒い時には寒い。夜は暗いという自然と共存していく暮らしをわたくしたちも東京で作り上げていきますから。

(2011.04.01)