川崎といえば、首都圏の大都市であり、方言とは縁遠いと思われがちだが、編集子は、「人々の暮らしの中や農具の呼び方に残っている。方言はその地域の一つの文化」と、特集の編集を意義づける。
面白いのは、今はその面影さえないが、かつて川崎市の海岸ではノリの漁が盛んで、海で働く人たちの言葉があった。ノリ漁は小舟に乗るので風向きが重要で、北風は「ナレ」、北東の風は「シモッサ」だった。「シモッサ」の語源は「下総」で千葉県中南部の旧地名。これが吹くと、必ず海が荒れるという。過去を現在をつなぐこうした言葉は残しておきたい。
それぞれの方言に、それを使った人を写真つきで登場させ、説明させており、読み物としてよくできている。元漁師だけでなく、九州や東北から嫁いできた女性が、方言にとまどったこと、勘違いしたことなどをエピソードを交えて紹介している。
(方言をまとめた企画がユニークだ)