地域づくりを「農」がリード
◆JAは必須の組織
昭和34年に西都市農業協同組合に入組、以来50年以上にわたり農協運動に取り組ませていただいています。脳裏にあるのは、JAが地域や自然界から必要とされる方策を念頭にJAが積極的に社会参加し、その存在を万人に問い「なくてはならない必須の組織となること」、これが信条です。JAの仲間とともに取り組んできた体験を振り返ってみます。 国内有数のグリーンピーマン産地の西都児湯地域で品質均一化、出荷調整による有利販売で面積を拡大、平成4年、ピーマン専門部会を日本農業賞受賞に導くことができました。さらに市場ではカラー系ピーマンの需要が高まり、1袋に数色入りの販売に着目、全国に先駆けてカラーピーマンの生産拡大に取り組みました。その結果、管内のカラーピーマン生産量は、13年の50tから19年には1500%増の750tと国内最大の産地になりました。
果樹では、沖縄県以外では生産されていなかった「マンゴー」の生産に取り組みました。農協内の作物部門と研究機関等との連携で「みやざき完熟マンゴー」の栽培技術の向上に尽力、その結果、昭和61年栽培開始時の農家戸数2戸、栽培面積0.22haから平成11年には27戸、7.58ha、販売額約1.3億円まで拡大、本県を代表する新ブランドの礎を築きました。
◆宮崎牛のブランド化
畜産振興では優秀な種雄牛の「糸秀号」の広域利用を実施、また、平成9年より地域の肉用牛の生産効率と農家の意識向上を目的に、子牛せり市開催時に関係機関職員を講師に研修会を企画・実施したことは、飼養管理技術向上が図られ、県内外の購買者などに宮崎牛への理解を深めたと思われます。
そのことは県内農家に夢と希望を与え、その後の経営規模拡大に大きく寄与しました。その結果、9年第7回全国和牛能力共進会で児湯地域出品の若雌4区と若雌5区で優等賞主席を獲得、当地域や本県名を全国に広めることができました。
「安全・安心」の取り組みでは、残留農薬検査・機能性成分分析などに併せて、肥料・堆肥分析を加えた総合的な検査体制施設として14年に「農畜産物検査センター」を開設。残留農薬分析法に宮崎方式を導入し時間が大幅短縮、県内農畜産物の安全担保に大きく貢献しています。
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農産物処理加工施設の落成式
◆口蹄疫との闘い
22年4月19日午後10時、「宮崎に口蹄疫が発生したらしい」との連絡がありました。すぐに「宮崎県JA畜産防疫対策本部」を設置し情報一元化とJAでとれる最大の対策を指示。しかし、それからの悲劇は4カ月にも及んでしまいました。
終息までの間、農場の防疫対策、飼料の確保と供給、道路封鎖及び消毒ポイントの確認、埋却地の確保、風評被害対策、種雄牛の分散、殺処分家畜の補償、経営再建に向けた財政税務対策などJAグループ自らの問題として「何でもすぐにやる」を基本に取り組みました。県からの要請には全面協力し、連日JAグループで約500人が殺処分や消毒に当たり、感染防止、拡大阻止に取り組み、その結果、約30万頭が犠牲という未曽有の被害と、多くの畜産農家の悲哀は避けられなかったものの、他県へ拡大せず8月に終息しました。
23年3月、東日本大震災が発生しました。天災は防げませんが、被害の拡大は人知で防ぐことができます。原発事故もそうです。その意味で天災は絶対ではなく相対だと考えます。肝要なのは危機に際して最悪を想定し、人間の英知を共有、結集し対策に当たること。天はそれを試しているのかもしれません。
◆復興と新生に向けて
24年に長崎県で開催された第10回全国和牛能力共進会において、本県が全9区分の内、5区分で優等首席を獲得、前回に引き続き総理大臣賞・団体賞を受賞、宮崎牛が連続日本一となりました。口蹄疫終息から2年余の不利な立場を克服しての名誉で復興・再生に向け、弾みがつきました。ただし24年度末の復興状況は、頭数ベースで繁殖牛64%、肥育牛74%、養豚87%で推移、これが今後の基盤となりつつあります。そのような状況ですが、登録農家戸数を維持するためにも、飼養管理指導の強化、衛生対策や生産性向上、消費拡大に取り組んでいます。
一方、畑作振興や畜産のみに依存しない産地構造への転換、雇用創出による地域経済の活性化など口蹄疫からの復興で重要な役割を果たす施設として、23年に年間4400t加工できる冷凍野菜工場を稼働させました。本県は大消費地から遠く、それがネックでしたが、加工し中身だけ送れば経費を軽減できます。
「JAの枠を超え、ローカル宮崎を創造します」。この言葉を念頭に大学や経済界との連携を密にし、宮崎産業活性化協会、宮崎県安全運転管理者等協議会や宮崎日伊協会の会長等を務め、常に「農」がリードする地域発展に努めていきたいと考えています。
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宮崎牛が日本一に
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