直売所を核に女性部活性化
昭和40年に静岡県厚生連に入職、結婚と同時に農業につき、49年間農業と農協にかかわる道を歩んできました。おかげで四季折々の農村風景、特に4月中旬から黄緑色にキラキラ輝く茶の新芽の美しさは、私の心をドキドキさせる一番好きな光景です。そんな美しい農村で生活できる楽しみを味わっています。
◆女性部の強化を決意
平成7年、JA静岡市美和支部の女性部支部長を引き受けました。その時、部員がどんどん減少する中、どのように歯止めをかけ、活性化させることができるか、これを中心にしようと決意、女性部役員や女性部に入っていない若い女性、JA職員などと共に女性部活性化を考えるプロジェクトチームをつくり、1年間「家の光」や「日本農業新聞」をテキストに勉強会をしました。
アンケートや地区座談会も開き、そこで考えたのは、どうすれば魅力ある活動ができるか、役員のなり手がない現状をどうするか、でした。役員の問題は、主力となる役員を10人に減らし、地区の連絡員の仕事を軽減して、それぞれテーマを持って組織活性化に努めてもらうことで解決しました。魅力ある活動に関しては、朝市または直売活動をやってみたいという声が集まりました。今でこそどこでもみられるファーマーズマーケットですが、当時は珍しくJA静岡市も開設していませんでした。
私の家は茶の専業農家で全量農協出荷しており、他の作物は何も作っていません。朝市など考えたこともありませんでしたが、部員が求めているし、農業新聞にも少しずつですが他県でやりはじめている記事もありました。 輸入加工品の怖さをとりあげた「それでもあなたは食べますか」のビデオを見たり、横浜港税関で輸入品が野積みにされていても腐っていないのを見たりして、私たちはこんな危険なものを食べていたのかと驚きました。私たちには土地があるのだから、安全でおいしい農産物を作って自分の健康を守るとともに、直売を通して消費者に安全でおいしいものを提供しようと朝市を始めました。
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JA静岡市本店外観
◆加工施設付の直売所
JAにお願いして加工施設を確保、朝市は順調にスタートしました。2年後には、10坪ほどの小さな施設を借り、年中無休の直売所「アグリロード美和」を立ち上げました。
直売所への出荷者の条件は、[1]JA女性部の部員であること、[2]「家の光」を購読することです。「家の光」は農村女性にとって幅広い知識を得るために欠かせない雑誌です。今年の全国家の光大会でアグリロードの直売所活動をテーマに、部員が発表しました。最優秀賞とまではいきませんでしたが全国6人入賞の一人に選ばれ、誇らしく感じました。
直売所の大きな活動として、消費者との交流を始めました。「生消(せいしょう)菜(な)言(ごん)倶楽部(くらぶ)」と名づけ、種まきから収穫、加工までの作業を通じて、消費者の声を聞いたり、農作業の現場を見てもらったりして、加工品の値段についても理解してもらえるようになりました。
◆人気の生消菜言弁当
「倶楽部」の発案で開発した「生消(せいしょう)菜(な)言(ごん)弁当」は、アグリロード美和の看板弁当です。平成15年の発売以来、年間5000〜6000食の売り上げがあります。消費者との交流は、新商品の開発にとって、買ってくれる人の意見が聞ける大切な機会です。
平成18年、隣にあったAコープマーケットが閉鎖しました。Aコープのお客さまが、同時に直売所のお客さまだったのですから一大事です。そこで仲間と話し合いAコープ施設の半分を借りて営業することにしました。今までの10倍の広さです。
広い店舗でとても心配しましたが、会員の頑張りとJA職員の指導、消費者との信頼関係などで、約1億円の売り上げがありました。女性だけで手さぐりで始めた直売事業ですが、農業の低迷の中で、女性の雇用の場としても重要な位置づけになっています。直売所を始めたころは、「女性の遊び場をつくったため、家の仕事がとどこおる」と怒っていた男性も、今では夫婦仲良く出荷に来たり、夫も野菜作りに協力したりしているようです。
70代後半の出荷者の一人は、「直売所がなかったら私たちは、今ごろデイサービスに行っていたかもしれない。直売所があるおかげで仲間もでき、お金にもなり、とても楽しい」と話してくれます。
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アグリロード15周年記念
◆女性総代20%
このような活動が認められて平成14年、JA静岡市では女性総代を一気に20%強に拡大することができました。総代会でも女性の意見が活発です。
平成17年には女性部代表として私を理事に押し上げてくれ、3年後にはさらに2人の理事が誕生、現在女性理事は3名になりました。変貌する農村ですが、今後農村が安心して豊かにくらしていくためには、地域に女性のリーダーがいることがとても大切です。それが組合員から頼りにされるJAになることだと思います。
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