「協同の心」再生を使命に
いまJA運動の中で一番大事なものは、「協同の心」です。昔の“結い”の心を再生させ、協同の力で農家所得の向上をはかり、農村に残る文化的な良き伝統を伝えていくことがJAの使命だと考えています。使命実現のため、営農と生活を車の両輪と位置付け「ゆりかごから墓場まで」の実践を目指し、健康・福祉・生活文化活動に力を入れ、様々な活動に取組んでいます。
私は職員時代、本店事務所や営農拠点センター、グリーンセンター、農機センターなどの施設を集約する計画「グリーンメッセ構想」に携わりました。その時に検討されたのがファーマーズマーケットでした。
◆直売所設置を組合長に直訴
当時、市内の消費者から「花巻のおいしい米や野菜や牛乳をなぜ地元で食べられないのか」という声があがっていました。また、女性部ではAコープ店舗などで野菜や果物の産直を行っていましたが、JA合併を機に、大型直売所建設の要請が高まっていました。ちょうどそのころ、アメリカから帰った高校時代の友人から「いま、カリフォルニアではファーマーズマーケットが大変な人気だぞ」という話を聞き、今がチャンスと、組合長に直売所開設を直訴しました。
しかし、全国のJAで大型直売所が成功した例は聞いたことがなく、組合長は最初、乗り気ではありませんでした。そこを説得し、やっと賛成してもらえたものの、「やるなら、金をかけるなよ」と釘をさされたわけです。視察先のJAもなく、全くの手探り状態の中、経費を節約するため建物はプレハブで空調は事務所にあった物を取り外して使いました。
◆生・消交流に見る“結”の心
直売所「母ちゃんハウスだぁすこ」を平成9年6月にオープさせ、損益分岐点は1日あたり140万円と試算していましたが、レストラン経営にも取り組んだ女性パワーのおかげで、一日の売り上げはあっという間に300万円を超えました。毎朝6時半には軽トラックにたくさんの野菜や花を積んでくる高齢の組合員を見るたびにJAの直売所は高齢者福祉活動でもあり、また生産者と消費者が交流するふれあいの場をみんなが力を合わせて築きあげる様子は、まさに“結い”の心だと感じます。
平成20年6月、近隣4JAとの合併により、4市2町をエリアとする現在のJAいわて花巻が誕生。その年の組合長就任以来、役職員に機会あるごとに言い続けているのは、「農家所得の向上」「地域貢献」「JAの経営安定」という3つの目標です。農家所得の向上は当然ですが、広域合併のなかでJAと疎遠になりつつある組合員や地域住民との絆を強める活動によって、組織や地域活性化をはかる「地域貢献」は重要な活動と捉えています。
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「母ちゃんハウスだぁすこ」の外観
◆支店行動計画で地域貢献
合併3年目を迎えたある日、幹部職員の総合企画会議で、各支店の行動計画をつくり、5日後に提出するよう指示しました。期間が短いことを理由に提出しない支店が出るのではないかと思っていましたが、締切日までに27支店の全てが提出。内容を読んで感心しました。「組合員から頼りになる営農指導」「一人ひとりがJAの顔となる」「組合員の心の声を聴く」など、私が日頃話していることが職員に浸透していると感じたからです。
行動計画は全職員研修会で紹介し、職員を励ますと同時に年度末の幹部職員会議では支店長にその成果を発表させています。計画をつくる際は、「やれることをやるのではなく、やらなければならいことをやる。また、高すぎる目標ではなく、背伸びすればできる目標を掲げないと職員は真剣にならない」と常に支店長に言っています。
◆震災復旧・復興に全力
現在、もっとも力を注いでいることは東日本大震災からの復旧・復興です。大震災では沿岸部の3支店が被災し職員7名が犠牲になりました。全国のみなさんには、今も温かい支援をいただいており、改めてJAグループの“絆”、協同の力を感じているところです。
震災直後から、JAの各組織が一丸となって被災地支援にあたってきました。米一升運動を地域に呼びかけ、いち早く被災地に米を届け、女性部が炊出しをしました。また、全職員による正組合員戸別訪問を4月に再開し、生活情報やJAの支援活動を伝えるとともに、安否確認と被害状況の把握に努めました。情報不足の中での戸別訪問は大変喜ばれました。 被災した3支店の臨時店舗もいち早く開設し、地域住民の利便性に寄与するとともに沿岸地域の農業復興の拠点を早急に建設しようと、行政と連携した取り組みを進めています。
今後は、これらの活動を強力に展開し、他地域のJAとの提携や相互交流から得た新たな視点による活動を加え、健康・福祉・生活文化活動の一層の充実をはかり、そして組合員・地域住民に必要とされるJAとなるため、“結い”の心の再生に、邁進していきます。
(写真)
「米一升運動」などの被災地支援活動
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