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【JAいわて中央代表理事組合長】
藤尾 東泉 氏

 「農協運動の仲間たちが贈る 第36回農協人文化賞」の一般文化部門を受賞した。

「食農立国」を目指して

 

 昭和44年、大学を卒業後すぐに就農をしました。早期に農協青年部の盟友になり、志和農協青年部委員長などを経て、昭和58年岩手県農協青年組織協議会会長となりました。この時期多くの仲間と米価運動、牛肉・オレンジ輸入反対運動を続ける中で、社会情勢や農業情勢の熱い思いを議論してきたことが、今日の私の農協運動の原点となり、基本理念となっています。
 平成11年にJA岩手しわ町(紫波町)、JAやはば(矢巾町)、JA都南(盛岡市)の3JAが合併し、JAいわて中央が発足しました。この中で初代の小笠原一行組合長は、1日でも早く1JAとして結束するため、「岩手県一の内容のあるJAを目指せ」「合併して良い点は良いJAに早く見習え」「JAの事業を早く統一せよ」の3点を掲げました。私も平成12年から常勤を務めさせていただきました。

 

◆消費者の信頼「安全・安心」で

味覚ツアーで喜ぶ親子連れ JAいわて中央の経営方針の1つ目は次の通りです。「担い手支援の充実による地域農業の振興を図り、『あんしん産地JAいわて中央』の銘柄と『食農立国』ブランドの確立に努めます。また、環境保全型農業を推進し、消費者に信頼される農畜産物を生産するとともに、農業所得の増大を図る生産・販売戦略を構築し、農家所得の向上に努めます」。
 平成18年に担い手支援対策課を設置し、集落営農、認定農業者の拡充強化を図ってきました。また、管内には251の農家組合があり、それぞれに支援担当職員を配置しています。各組合の総会の資料作成やJAに提出する助成金の申請、農家組合の研修にも参加しながら、JAの情報を常に農家へ繋ぎ、JAと組合員のパイプ役になっています。
 中期3ヵ年計画策定にあたりアンケート調査したところ、JAに望むこととして「販売戦略の構築」がありました。この「販売戦略」に伴う「ブランド化」であり、この時生まれたのが「食農立国」です。商標登録をしており、JAの役職員の名刺にロゴマークを印刷し、系統販売のための資材にも「食農立国」を明記しています。
 さらに環境保全型農業を推進するため、農薬・化学肥料の使用を極力減らす運動を平成13年から行い、すべての農産物について生産者が栽培履歴を記帳し、「安全・安心・美味しい」農産物の販売に努めています。平成16年からは、大変難しいとされていたリンゴでの特別栽培に取り組み、平成24年に日本農林水産祭園芸部門で内閣総理大臣賞を受賞。25年度は「農事組合法人ゆいっこの里犬草」が全国豆類経営改善共励会大豆集団の部で農林水産大臣賞を受賞し、「農事組合法人アグリ赤林」が全国麦作共励会集団の部で農林水産大臣賞を受賞しました。一連の受賞は当JAの目指す「食農立国」ブランド化への取り組みが着実に進展していることの表れだと思っています。

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味覚ツアーで喜ぶ親子連れ

 

◆次世代対策で選ばれるJA

 経営方針の2つ目は「食農教育を通じて次世代の育成に取り組むとともに、JAの総合力発揮による新しい価値観を創造し、地域社会に選ばれるJAを目指します」です。
 食農教育では年3回の農作業体験ツアーを組み、春の田植え作業からトマトの収穫とピザ作り、秋の稲刈りとしいたけの収穫体験など、親子延べ120名の参加があります。また、JAの子会社「JAシンセラ」では、管内の矢巾町と紫波町の学校給食に、地産地消という立場から地元食材を優先的に供給しており、食農教育の輪が広がっています。

 

◆収益力安定へ部門別の管理

ブランド化PRで店頭に 経営方針の3つ目は「JA運動を通じ組合員の協同活動への参加・参画を図り、組織活動の活性化を図ります。また、JAを取り巻く環境変化に対応できる職員の人材育成を図るとともに、人を育てる職場風土を確立します」です。
 私自身、平成14年度JA経営マスターコース3を受講する機会を得られ、この時「JAの経営環境」「JAの経営戦略」等を学びました。この中で、JA改革を担う人材育成をどう進めていくかが大きな課題となり、即戦力となる職員教育を重視し、過去3年間で全職員の延べ3分の1が各種の資格試験に合格しています。
 経営方針の4つ目は「JAいわて中央の信頼を確実に高めるために経営改善や財務改善に努め、収益力の安定化を図り強いJAを目指します」です。
 組合員の信頼を高めるためには、特に場所別・部門別の採算性を重視した経営の健全化と、経営の安定化を図っていく必要があります。当時大幅な赤字を抱え込んでいる経済事業改革に取り組み、Aコープ店の経営移管、SSの全農エネルギーへの経営移譲、さらに購買事業改革を実施する中で、生産資材店舗16か所を資材受注センターと7つのグリーンセンターにまとめ、赤字からの脱却が図られ成果が上がっております。また、信用事業では7か所の出張所を統廃合し、収益力の低下が止まり事業の改善に明るい兆しが見られるようになりました。今後とも場所別・部門別の徹底管理していく方針です。

(写真)
ブランド化PRで店頭に

 

【推薦の言葉】

震災時は陣頭指揮執る

 藤尾氏は、平成2年に旧岩手紫波町農協理事に就任して以来、今日までJA運動に挺身してきた。経営理念の一つである「新たな農業観の確立と環境保全に配慮した農業の推進」や「地域農業の多面的な役割を重視しながら、豊富な生産基盤を基軸に、新たな農業の魅力を創造」を基軸に、米を中心とした野菜、果実等の園芸作物、畜産物等、各作目がバランスのとれた広域複合産地づくりをすすめている。
 一方、東日本大震災時には、いち早くJAの全組合員が「組合員一戸一升運動」を展開し、青年部、女性部が直接被災地に出向き、炊き出しや生活物資の支援を行うなど、組合長自らが陣頭指揮を執り、被災者の支援はもちろん、JA間支援に奔走し、地域のライフラインの一翼としてその役割発揮するなど地域コミュニティの活性化に貢献した。また「新世紀JA研究会」の第3代の代表に就任し、JA役職員の交流事業に取り組んでいる。


【略歴】
ふじお・とうせん
昭和22年生まれ。44年東京農業大学卒業、58年岩手県農協青年組織協議会会長。平成2年岩手紫波町農協理事、11年岩手中央農協理事、12年代表理事副組合長、15年代表理事専務、20年同農協代表理事組合長。同年岩手県農協中央会理事などに就任し現在に至る。

(2014.07.11)