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【農研機構・九州沖縄農業研究センター】
本土でも生産できるサトウキビ  農研機構が新品種

 農研機構・九州沖縄農業研究センターは10月31日、2種類のサトウキビ新品種を発表した。1つは、新たな特産品の開発・生産などで地域活性化に貢献できる新品種として、九州・四国などでも生産可能な「黒海道」(くろかいどう)。もう1つはトウモロコシやソルガムなどに替わる飼料用品種「しまのうしえ」だ。

【黒海道】

◆新たな特産品開発に貢献

shin1111090101.jpg 現在、サトウキビの生産は鹿児島で離島を中心に1万2300ha、沖縄で1万8900haあるが、本土での生産はほとんどない。
 なぜなら、搾汁液の中に溶けている糖分などの割合を示すブリックスが少なくとも16%以上なければ、サトウキビから黒糖を製糖しても品質や歩留まりが低いため商品化が難しいが、また、本土ではこの数値が上がる前に霜が降りるなどして収穫ができなくなるなどの難点があるからだ。
 このたび農研機構が育成した新品種「黒海道」は、糖分上昇が非常に早い。春に植えて10月時点でブリックスが16.4%に達し、現在の主力品種である「農林8号」より3ポイントほど高く、11月にはこれが19%を超える。そのため、本土でも黒糖原料として生産できるのが最大の特徴だ。
 また黒海道を使って試験的につくった黒糖は、色彩、香味などの点でも「農林8号」に比べて優れていた。


◆特産品「三奈木砂糖」 JA筑前あさくら

 現在、本土で組織的にサトウキビを生産して成功している地域としては、高知県黒潮市と福岡県朝倉市がある。
三奈木砂糖の製糖工場(=JA筑前あさくら提供) このうち朝倉では、江戸時代からの伝統作物として「三奈木砂糖」の名で30年ほど前に復活しブランド化した。JA筑前あさくら内に三奈木砂糖研究会があり、5人の会員が1.5haを作付けし、例年6.5〜7tほどの生産量がある。JAとしても2年前に製糖工場を更新し、地元のお菓子屋や酒造メーカーなどに卸しているほか、直売所やJAの支店でも販売し、売上高は年間1000万円ほどだ。
 サトウキビの生産には加工が不可欠となるが、これは搾汁器と煮詰め用のカマがあればでき、大規模な加工場がなくても、生産者が個別に加工している場合もあるという。
 農研機構では今後、地域ブランドとしての黒糖生産とその加工産業の創出を通じて地域活性化や、農業の6次産業化につながる品種として、九州や四国を中心に「黒海道」の普及活動をしていく考えだ。

(写真)
三奈木砂糖の製糖工場(=JA筑前あさくら提供)

【しまのうしえ】

◆島の牛のエサ不足を解消

 畜産農家の経営安定化やコスト削減対策、また食料自給率の向上に向けた取り組みとして、自給粗飼料の増産はひとつの課題だ。
 06年にはトウモロコシや牧草に替わり、省力栽培が可能で台風などの自然災害にも強い多収の飼料作物として、国内で初めて飼料用サトウキビ「KRFo93-1」が開発された。乾物収量は牧草ローズグラスの約2倍で、栄養価も既存の飼料作物と同程度という優良品種だったが、サトウキビ独自の病害である黒穂病に弱いという欠点があり、これが発生する奄美地域以南では栽培できず、生産量は鹿児島の本土と種子島で計30haほどの生産に留まっていた。
 このたび開発した「しまのうしえ」(島の牛の餌、の意)は、「KRFo93-1」と同等の品質・収量がありながら、黒穂病への耐性も強い。有傷接種での発病率はわずか10%ほどだった。
 再生力が高いのも特徴の一つで、一度植えると年2回の収穫を5年間ほど維持できる見込みだ。
 現在、農研機構では奄美や沖縄で試験栽培を行っており、九州・沖縄での粗飼料増産につながる品種として普及拡大をめざす。

トウモロコシやソルガムなどに替わる飼料用品種「しまのうしえ」

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