農水省総合食料局に設置されている、「販売」を軸とした米システムのあり方に関する検討会(座長:
八木典宏東京農業大学国際食料情報学部教授)は、3月7日に開催した第9回検討会で、米の生産コスト縮減のための取り組み事例の一環として、福井県農林水産部の山本浩二氏から、同県の直播の普及状況について報告を聞いた。報告の概略は次の通り。
福井県の耕地面積は4万1300haで、水田面積が90.8%を占め、米に特化している。専業農家比率は9.6%で、全国平均の22.1%に比べ、かなり低い。平成18年の農業算出額中、米は68.3%の338億円だった。
直播に本格的に取り組んだのは平成14年産から。県の「コシヒカリ直播普及拡大事業」で、▽JAを中心とした受託システムの構築▽直播リーダーの養成▽団地化、規模拡大への助成を事業内容とした。直播対象をコシヒカリにしたのは、最も米価の高い品種のコスト低減をめざしたもの。
平成17年産からは「直播による稲作経営規模拡大事業」とし、引き続き直播リーダーの養成を進めた。また、前年より直播規模を拡大した面積に助成を行っている。平成19年の直播面積は2897haで、米の作付面積の10.5%。全国一の普及率だ。米どころの坂井町では24.7%に達する。
直播の方法は湛水直播が97%で、ほとんどが条播と点播。担い手の直播面積は認定農業者の法人と生産組織が全体の57%を占める。 直播のメリットは、今のところコスト低減よりは省力化の方が大きいという。苗箱洗いが省かれ、歓迎されている。また、出穂が7〜10日遅れるため、出穂期高温を回避できる。コシヒカリに集中している生産者は、収穫期の分散ができるので、好都合という。
同県では、直播の収量減を13%と認定して、その分を生産調整目標面積から控除しているので、米の作付面積を増やすことができるという利点もある。
山本氏は今後の課題として、(1)移植栽培との収量差の解消、(2)個別大規模農家への普及、(3)除草剤の高コスト対策などを挙げた。
委員からは、「大規模農家の平均年齢が70歳という現状だから、直播は便利。女性の労力節減になれば、農家にお嫁さんが来てくれるのでは。コスト以外のメリットも重視するべき」、「コストが少しでも減れば、規模拡大ができる」、などの意見があった。