若林農相は4日、ダボスでの非公式閣僚会合で議長を務めたスイスのロイタード経済相と電話で会談。農業分野以外でも非農産品(NAMA)やサービス、ルールなどの分野でも対立が多く双方とも閣僚会議に日程よりも「中身が重要」との認識で一致した。若林農相は、各国が抱えている懸案事項について高級事務レベルで精力的に交渉をしているが、「どうしても詰め切れなければ中身をさらに詰めるということは先」と述べ、3月下旬の閣僚会合開催がずれる結果になってもやむを得ないと話した。
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ファルコナー農業交渉議長案の改訂版に対する主要国政府や農業団体の反応はどうか。JA全中のまとめから紹介すると、米国はシュワブ通商代表が「年内の交渉妥結のために必要なリーダーシップを発揮する」としながらも「交渉の前進には農産品、非農産品、サービスに関する市場アクセスが不可欠」との声明を公表した。しかし、農業の国内支持についてもコメントは避けている。
また、農業分野については議長案改訂版に170あまりのカッコ書き部分があるが、「閣僚が議論するためには6程度まで減らす必要がある」と発言している。一方、米国農業団体からは反応がなく、関心は次期農業法に集中しているみられるという。米国議会では昨年7月可決の下院案、同12月の可決の上院案の調整が焦点で、大規模農家に対する支払い助成金総額の制限や、助成金増額分の財源確保について十分な調整ができていないという。02年農業法の期限は3月15日だが、調整のための両院協議会も設置されておらず、難航する調整に米国の関係者からは現行法の短期延長も視野に入っていると伝えられているという。
EUは、マンデルソン通商担当委員が交渉の早期妥結を最優先するとの立場を崩していない。このためEU農業団体連合会(COPA)は「農業分野において相当の譲歩を行っているにもかかわらず、EUがNAMA、サービス分野で得るものは何もない」とマンデルソン委員への批判を強めている。
また、EU27か国中、20か国の農相が議長案改訂版に反対する立場を表明。サルコジ仏大統領は、国内の農業見本市で「EU農業に犠牲を強いる合意には一切反対すべきである」と発言、強い姿勢を示した。一方、英国は農相も改訂版に反対を表明したフランスに同調していないが、ブラウン英国首相も交渉の早期妥結を支持しマンデルソン委員の姿勢を評価する発言を行ったと伝えられている。
豪州政府の反応は「改訂版は協議の前進をはかる基礎を提供しており評価できる」というものだが、NAMA分野で自由化の度合いを引き上げることには難色を示しているという。
カナダ政府は改訂版を歓迎しつつも「重要品目の取り扱いに関しては憂慮せざるを得ない」との声明を発表している。カナダ農業者連盟や畜産物の品目別農業団体も、重要品目への憂慮を示している。
そのほかインド政府はナート商工相が改訂版を歓迎しつつも「特別品目(SP)、特別セーフガード措置(SSM)について残された課題が多い」とコメントした。
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NAMA分野の大きな焦点となっていたのが、途上国に対する一定品目数の例外扱い。関税の一律的削減(スイス・フォーミュラ)方式から例外とする品目数については、改訂版では空欄として提示。ステファンソンNAMA議長が品目拡大を求める途上国に配慮したが、もっとも争点となっていた項目が空欄となっただけに途上国、先進国の双方に不満が高まっている。 また、ダンピング防止などのルール交渉分野では、米国のダンピング防止措置がすでにWTO紛争処理パネルで敗訴が確定しているにもかかわらず、その存続を認める議長文書が提示されたことから、日本が強く反発。日本の立場を支持する加盟国は100か国に及ぶと伝えられている。さらに物品以外の貿易自由化を交渉しているサービス分野では議長案の体裁となっていないレポートが提示されたことに、日本、米国、EUなど先進国が不満を表明。一方でブラジル、アルゼンチンなどの途上国は議長案の体裁をとった文書提示には抵抗を示している。
このように農業、NAMA以外の分野でも意見は対立しており、閣僚会合の開催時期とともに、農業、NAMA以外のどの分野を閣僚間で話し合うのかも大きな争点となっている。
ただし、交渉の行方を睨みながら農業分野では引き続き調整を行い、対立する論点を削減していってファルコナー議長が第2次改訂版を全体会合以後の3月17日以降に提示するとの見方が強まっている。
JAグループでは第二次改訂版提示以降、閣僚級会合開催までが「JAグループとして意思反映に取り組む最大の山場になる」として当面の運動期間を3月から4月末と設定、JAグループの意思結集、政府・国会などへの働きかけ、代表団派遣、海外農業団体との連携に取り組む。また、閣僚会合が4月下旬から5月上旬にかけて開催される場合は、4月下旬に全国代表者集会と都内での街宣活動を予定している。