冬は分解がほとんど進まない生分解性プラスチック(生ブラ)だが、(独)農業環境技術研究所は、これを強力に分解する微生物をイネの葉の表面から発見したと3月10日発表した。
プラスチックゴミの排出量は1千万t。うち農林業用は約15万t。ゴミ減量のためにと農業用マルチフィルムには生プラが導入されている。畑から回収しなくてもよいという省力効果も大きいからだ。
ところが生プラは乾燥して温度の低い冬季には分解が進まないという問題がある。このため強力な菌を利用した分解促進技術が期待されていた。
農環研では植物の葉の表面が生プラの構造と似ていることに着目し、イネの葉を探索したところ、その表面に分解能力の高い酵母菌が生息していることを発見した。
これら酵母菌は、農業用マルチフィルムなどに使われるポリブチレンサクシネート(PBS)やポリカプロラクトン(PCL)などの生プラを効率よく分解することがわかった。
また常温では分解されにくい植物由来プラスチックであるポリ乳酸(PLA)も常温で分解できることが明らかになった。
生プラは脂肪酸ポリエステル構造を持つものが多く使われているが、動植物の体表面を覆う脂質にも同じ構造が含まれている。そこで農環研は植物表面に付着する微生物の中から、生プラを分解できるものを見つけられるのではないかと考えた。
この成果は使用済み生プラを効率的に分解する技術開発の基礎になると期待される。研究は産業技術総合研究所、筑波大学との共同。研究推進責任者は農環研の佐藤洋平理事長、研究担当者は同研究所の北本宏子主任研究員。
成果は3月26日から名古屋で開く日本農芸化学会08年度大会で発表される。