(独)農業環境技術研究所(農環研)と(独)農業・食品産業技術総合研究機構作物研究所(作物研)はこのほど、昨年8月に関東・東海地方で観測史上最高の40.9℃を記録した異常高温により、この期間に出穂・開花した水稲に通常より高い割合で不稔が発生したことを確認したと発表した。
これまでの室内実験では、水稲の開花時の温度が35℃を超えると、受精障害により不稔籾が多発することが、知られている。被害発生が懸念された昨夏は、農環研と作物研が記録的な猛暑となった地域で不稔発生の現地調査を行った結果、出穂・開花の時期に高温に遭遇した水田では通常よりも高い割合で不稔が発生する傾向が見られたという。最高気温が35℃を超えた水田では、通常5%の不稔率が10%を超えた。また、農環研の実験水田では、最高気温の高い時期に出穂した区画では20%を超える不稔が記録されるなど、不稔籾の割合は出穂・開花時期の温度とともに高まることがわかった。
しかし昨夏の場合は、不稔の割合は室内実験で推定される温度反応よりは低く、出穂・開花の時期に高温に遭遇した水稲が少なかったこともあり、実際には作況に影響するような大きな被害にはならなかったという。
農環研と作物研は「今回の結果は、今後予想される地球温暖化の進行が水稲におよぼす影響を予測・検証する上で重要な基礎資料になる」と話している。