サルなどの野生獣類による農業被害は年間135億円(平成18年度)にのぼり、深刻な問題。この被害を減らそうと(独)森林総合研究所は3月28日、里に居着いたニホンザルを山に戻す「追い上げ」のマニュアルと事例集をつくった。
サルは知能も運動能力も環境適応力も高く、これまでの防除法は十分な効果を上げていない。追い上げの実戦的な技術もなかった。そこでマニュアルの活用により追い上げが被害防止技術として実施されるようにした。森林総研は「サルと人間の共存が果たされることを期待」している。
マニュアルは▽森林の縁の低木を伐り、下草を刈り取って見通しをよくする▽サルの群れが、追い上げ先で生息できる環境を確保する▽積極的に犬を活用するーなど追い上げを効果的に行う事項を挙げている。同総研と各大学、自治体の林業部門が行動観察や実験を続けた結果だ。
サルは野荒らしだけでなく、住宅地にも進出して被害を広げているため、サルと人間の生活域を分けるための積極的な対策が求められていた。
追い上げとは、威嚇などの手段でサル群を農地などから隔たった目標地域へ追い立てる、または誘導する方法だ。しかし、これまではこの対策の基盤となる考え方やデータがなかった。問い合わせは森林総合研究所関西支所連絡調整室TEL075(611)1201。