原油高騰の影響でA重油価格は17年から高騰を続け16年にくらべて20年は1リットルあたり約41.5円、86%も上昇し、施設園芸コスト増大に直結、光熱動力費がコストの4割を占めることになりそうだとの試算をこのほど農水省が示した。
品目別経営統計でピーマン(冬春)経営の場合、17年産の農業粗収益は10aあたり368万6000円。コストが210万4000円でこれを差し引いた農業所得は158万2000円となっている。コストのうち光熱動力費は62万6000円で30%を占めた。
これにA重油高騰などを織り込み、粗収益を17年産と同じとして20年産を試算すると、10aあたりの光熱動力費が17年産比39万5000円上昇して100万円を超え、コスト全体の41%を占めた。それにともなって農業所得も40万円近く下がり、約119万円と落ち込む。
バラ(切花)の場合は、コストに占める光熱動力費が17年産の31%から43%に上昇、10aあたりの農業所得は162万円から87万4000円と大きく落ち込む試算を示している。
園芸用施設は約5万2000ha設置されており、野菜作が14万5000戸、花き作が3万8000戸あるが。昭和60年ごろは野菜作では19万戸を超えており、高齢化などで減少傾向を示している。
面積規模では30a以上の経営が昭和60年では12.3%だったが、平成17年では25.5%と大規模層が倍増している。土地生産性は露地野菜単一経営では10aあたり14万9000円で、一方、施設野菜単一経営では33万円と高い。しかし、手作業中心で労働時間は多い。露地の場合の労働時間2340時間にくらべて、施設園芸では5874時間となっている。このため農業所得は高いものの労働生産性は1時間あたり露地は746円、施設園芸は892円と大きな違いはないのが現状だ(いずれも17年データ)。
こうしたなか燃油価格の高騰が農業所得を低下させていることから、農水省は施設園芸生産者の経営の安定のため、A重油にかかる石油石炭税の減免措置(1klあたり2040円)を継続しているほか、20年度予算では石油価格に左右されないよう電力利用のヒートポンプの導入や、木質バイオマス利用の加温施設など先進的システムのモデル導入を支援する。
石油焚き暖房機とヒートポンプを組み合わせたハイブリッド加温設備や、木質バイオマス利用設備などの先進的省エネルギー設備のモデル導入には、補助率2分の1で約3億7000万円を確保し、今夏から公募する予定だ。