◆「見解の相違がある」−全農
農水省は全農改革の進捗状況について「経済事業改革チーム」(座長・岩永副農相)が検証してきたが、4月23日、改革状況について現時点の同省の評価をまとめた。
評価書では、改善計画策定から2年が経過し、経営の合理化などでは「おおむね計画どおり」とする一方で、改革の柱である担い手対応強化と販売機能強化については「取り組みに遅れがみられ、改革の成果が担い手に実感されるまでに至っていない」として、取り組みの強化が必要としている。
ただ、全農が改善計画で示した目標や事業の基本スタンスと食い違った評価もある。
米穀事業では20年産までに「実需を特定した安定取引」を100万トンに拡大することを目標とし、19年産で約103万トンと目標達成状況にあるが、評価書では「目標に対して19年産の収穫前の安定取引契約はわずか約15万トン」と断じている。これは実需者と数量、価格、引き取り期限をセット契約するという「特定契約」販売の量を認めていないため。特定契約は16年産では35万トンだったが19年産では88万トンにまで増えている。特定契約も「実需を特定した安定取引」であることに変わりはない。
全農は農水省のこの評価について「よりハードルの高い播種前契約や収穫前契約に力をいれるべき、が改革チームの考えだと思うが、われわれとは見解の相違がある」とする。
さらに評価書ではこうした安定取引が低調だったために「買取集荷への移行もできず、委託集荷方式となっており、しかも、販売力のなさから19年産では集荷時の仮渡金問題で生産者に混乱を与え価格を引き下げる要因のひとつになった」と総括している。
買取集荷については20年度米穀事業でもその拡大を課題としているが、あくまで委託販売を基本とすることがスタンス。それは「系統組織は、買いたい米だけ集めて売っていくという仕組みではない」(全農)からだ。評価書の書き方では買取集荷への移行こそが課題であるかのような指摘だが、生産者がJAに出荷したものを共同計算方式によって公平性を確保しながら安定的に販売していくのは「連合会」の基本的な機能といえる。
◆「米緊急対策」まで「評価」するのは適切なのか?
さらに昨年の概算金(仮渡し金)問題についても評価書では「販売力のなさ」を原因としているが、3月の全農臨時総代では概算金問題ついて「根本的な原因は生産調整政策にある」と総代発言があり、問題の本質を見極めるべきというこの指摘は大きな賛同を得られたのではなかったか。JAグループとして改めて認識する必要がある。
また、今回の評価書では「改善計画に盛り込まれていない取り組みについての評価」として、事業推進体制の再構築のほか、米緊急対策についても言及している。
米緊急対策では10万トンとした飼料用米処理が約1.5万トンにとどまったことを、「自ら実行を約束した取組が不十分になったことについて重く受け止め、二度とこのような事態が起きないようにしなければならない」と批判。これを受けて20年産の生産調整について、「全農は全中任せにするのではなく〜生産調整の実効性の確保に主体的に取り組むべきである」としている。
飼料用米処理については見通しが甘かったことを国会審議などでもJAグループとして認め、また、20年産の生産調整目標の達成は最重要課題である。ただし、これには全農のみならずJAグループ全体としての取り組みが必要なばかりか、昨年末の米政策見直しでは行政の関与を強化することも盛り込まれている。
全農の改革は進めなければならないが、そもそも今回の評価書で改善計画に盛り込まれていない事項だとして、米政策を「評価」するのは適切なことなのかどうか。論議を呼ぶと思われる。