農林漁業金融公庫は畜産農家が導入した素牛を担保に融資を行う事業スキームをこのほど確立、その第一号案件を千葉県で実施する。
畜産農家が飼養している肥育牛などを担保にする畜産版ABL(事業資産を担保にした融資)で、今後、他の農業分野への応用も図り、生産者の資金調達手段の多様化によって経営安定に役立てたいとしている。
今回の事業スキームは、畜産農家が農林公庫から融資を受けるかわりに、導入した素牛を公庫側に引き渡すことが条件(譲渡担保設定)。第一号案件では千葉県内の肉用牛農家が1000万円の融資を受ける。
一方、公庫は千葉県食肉公社と、農家から出荷された肥育牛の扱いについて協定書を交わし、ほぼ2年後のと畜・出荷時には販売代金の一部を公庫側へ優先的に返済に充てることとしている。また、飼料会社とも協定書を交わし、畜産農家への飼料販売と技術指導を通じ、日常的に担保牛の飼養状況や在庫確認を行い、それを公庫に報告する。
かりに融資先の畜産農家が経営不振に陥った場合は、千葉県食肉公社が別の畜産農家に手数料を支払って肥育を再委託することも盛り込まれている。
同様のスキームで今回は日本ハム子会社の飼料会社、ニッポンフィード(株)とも協定書を締結し、同社が担保牛の最終管理者として、融資を受けた畜産農家への担保牛調査や経営指導、経営不振時の肥育代行を行うという事業も決まった。
動産担保としての家畜は金融機関にとって、一定の月齢に達しない限り、商品価値をほとんど持たず、融資先農家がかりに経営不振に陥った場合は家畜の換金や融資の返済が事実上できす、しかも担保価値は大幅に下がってしまうというリスクがあった。今回のスキームは関係事業体が飼養管理や経営指導、さらに経営不振時の肥育再委託の仕組むを盛り込み、返済が確実に行われる「出口対策がしっかりできた」ことが特徴。
同公庫では、実際の融資事例からデータを蓄積し、家畜の担保価値の適正な評価確立をめざすほか、豚、ブロイラーなど畜産分野のほか、米、麦などにも応用を検討し農業版ABLの活用を広げたいとしている。