政府は5月7日に「食料の未来を描く戦略会議」からのメッセージを受け取り、それを受けて「21世紀新農政2008」を決めた。テーマは「食料事情の変化に対応した食料の安定供給体制の確立にむけて」。
21世紀新農政は年間の農業政策の基本方針をまとめたもので、今年で3回目の発表。新農政08では食料の安全保障や食生活の充実、食料自給率の向上といった食料確保のための戦略的対策、農山漁村の活性化対策、環境・資源対策という3点を柱としている。
食料の安全保障については、国際的な食糧戦略の確立や国内農業の強化など基本的な方向性は新農政07から大きく変わっていない。しかし、より多くの国民から農政に理解と共感を得られるように、また世界的な食料事情の変化に瞬時に対応するために、食料事情についての情報を一元的に収集・分析・提供できるような情報網の発達を目指すことが加わった。
食生活の充実と自給率向上のためには、米食の促進とパンやめん類への米粉利用と、飼料自給率向上のために飼料用米への活用など米利用の新しい可能性についての政策が盛り込まれた。ただし米粉や飼料用米の利用については具体的な政策は提示されていない。農水省は「予算や法律などの制度改革を含めて、これから具体案を提示していく」としている。
また食の信頼を確保するために中小食品事業者の企業行動規範を定めたり、食品製造工程の監視や是正を行うHACCP手法を全国で5000の畜産業者に導入することを目指す。
農山漁村の活性化については、すでに発表されている子ども農山漁村交流プロジェクトや農商工連携の強化などを中心に地方の活性化を狙う。
環境・資源対策ではバイオマス利用の促進を引き続き行い、7月の洞爺湖サミットで日本型のバイオマス利活用を世界へ発信することを目標に掲げた。
農水省は新農政08について「戦略会議のメッセージを踏まえながらスピード感を持って対応する」とした。また地方にもメッセージを伝えるため、各地域で情報交換と対話を行い国民運動的な取り組みにしていきたいとしている。
新農政08の決定と同時に新農政07、同06の進捗状況の発表もあった。
全国主要2000産地へのGAPの導入や、バイオマスタウン300地区構築などは目標達成に向かって前進している。また農林水産物や食品の輸出促進についても、中国への合計100tの日本産精米の輸出や農林水産物輸出ビジネスモデルの構築などを達成した。
また2年前の新農政06で目標とされた2010年度までに農業経営参加企業を当時の173法人から500法人にまで増やす点については、2007年9月現在で256企業の参入と発表された。
その他、農地改革として農地面積約350万haの7割を2015年度までに面的に集積する計画や、毎年1万2000人の39歳以下新規就農者の確保などについては具体的な達成数値は明らかにされないものの、引き続き取り組んでいく。