農業の高齢化は深刻。後継者のいない農家の廃業や大幅な規模縮小で遊休農地が増えている。このため全国農業会議所は今年度から農業経営を「譲りたい人」と「受け継ぎたい人」の仲を取り持つ「農業経営継承事業」を始めた。農水省の助成を受けた事業で現在、経営資産を移譲してもよいという農業者と、ぜひ継承したいという意欲的な新規就農希望者の両方を募集している。
同会議所内に設けられた全国新規就農相談センターは「今年度内に全都道府県で、それぞれ最低1件くらいは話をまとめ、合計50組程度の継承を目指したい」としている。
廃業や経営規模の縮小は中核的な担い手である認定農業者も例外ではなく、販売農家の半数は後継者がいないというのが実情だ(05年センサス)。後継者のいない認定農業者のうち3割は第三者に経営を譲渡してもよいと考えている(02年同会議所調査)。
経営資産は農地や機械、施設だけでなく、技術や経営ノウハウ、販路、家畜、樹木などに及ぶ。
一方、農業外からの新規就農希望者は年々増えているが、農地の確保や資金、技術などが課題となっている(07年全国新規就農相談センター調査)。
都道府県の相談センターへの相談件数と合わせると年間約1万3000件となる。また新規就農者は農水省の調査によると06年に2180人となっている。
農業経営継承事業は譲りたい人と新規就農希望者をマッチングし、(1)お互いを確認するための短期間(2週間以内)の現地研修(2)経営を引き継ぐために必要なノウハウの研修(6ヶ月から1年)(3)市町村の農業委員、行政などによる両者のコーディネート(後見人)活動で橋渡しをする。
また経営を譲った農業者が引退後に安心して暮らせるようにアドバイスする。 継承に当たっては農地利用や税金、法人化などの問題が出てくるため研究者や弁護士、税理士、不動産鑑定士などによる「経営継承マニュアル」を作って、当事者や関係者が利用できるようにする。