政府は5月16日の閣議で19年度の「食料・農業・農村白書」を了承した。
19年度白書は、食料事情をめぐる国際的な環境が大きく変化し、中長期的に食料需給のひっ迫の可能性があることを重視した。
食料の6割を海外に依存するわが国として、「現在の大量輸入、大量廃棄等の食生活」を見つめ直し、将来にわたり食料を安定供給するシステムを早急に確立することは、単に食料・農業の観点にとどまらず、環境・国土保全、国民生活のあり方にもかかわる「重要な国家的な課題」と強調した。
そのうえで限られた農地を有効に活用して国内農産物の生産を増やしていくことが重要で、とくに食料自給率向上のためには、「米粉利用の推進を含む米の消費拡大」をはじめ、食育や地産地消によって消費者、食品産業が国産農産物を積極的に利用していくなど、生産・消費両面に関係者が一体となって取り組むことが課題だと指摘した。
白書では、穀物価格の高騰の要因として中国、インドなどの経済的発展による需要増大や、バイオ燃料の需要増、気候変動などを指摘したほか、穀物、原油価格の高騰が飼料原料や生産資材価格の上昇によって畜産など農業に大きな打撃を与えていることにも触れ、「国民全体で食料問題の認識を共有し、諸課題に一体的に取り組むことが必要」だと強調している。
一方、農業政策については、19年度の米価下落に対応した米の緊急対策の実施や、品目横断的経営所得安定対策の要件見直しなどが実施されたことを紹介しながら、今後とも「生産現場の声を踏まえつつ適切に対応していくことが必要」としている。
米政策については、生産調整の確実な実施により、自給率向上につながる麦、大豆、飼料作物の着実な生産と、米緊急対策を受けて、米以外の生産ができない水田での飼料用米、バイオ燃料用米などの取り組み推進の重要性をあげた。
また、バイオマス利活用の加速化は、地球温暖化防止の視点に加えて、食料生産の枠を超えて耕作放棄地を活用するなど、食料安全保障にも資する農業の新たな領域を開拓する観点からも重要と強調。さらに稲わら、間伐材などのセルロース系原料といった食料と競合しない原料によるバイオ燃料の生産のための技術開発推進が必要だとしている。
そのほか、農村振興では、農商工連携の強化や、次世代を担う子どもたちを中心としたグリーンツーリズムの推進の必要性を指摘している。