JA共済連(上原寿宰理事長)は、建物更生共済の自然災害リスクに関して、地震によって日本国内で発生した損害を対象に証券化を実施した。JA共済連のリスク証券の発行は平成15年に続き2度目となる。
今回の証券化は世界最大級(日本では過去最大)の総額10億ドル(約1000億円)まで追加発行が可能な発行枠を設定。初回発行として5月の3億ドル(約300億円)を実施した。 今回の取引きの仕組みは図のようになっており、ケイマン諸島に設立された特別目的会社・MUTEKI Limitedが投資家に対して3年満期・額面3億ドルの債権を発行して資金を調達する。この債権では、投資家は利回りを受け取ることができるが、予め定めた条件を超える地震が発生した場合には、償還予定元本の一部または全部を減額されるという発行条件が設定されている。
元本減額となる地震の規模は、概ね100年に1回程度の規模(東海地震を想定)を想定しているが、25年に1回程度の規模の地震が発生した場合には、50年に1回程度の規模まで元本減額の条件が下がる「ドロップダウン条項」が付帯されている。
JA共済連や民間保険会社は、大規模災害などが発生したときにも経営の健全性を損なわず契約者に共済金(保険金)を支払うことができるようにするために、他の保険会社などに再保険をし、リスクの移転をはかってきている。しかし、この再保険市場はひとたび世界的な規模で大規模な自然災害が発生すると、再保険料の高騰、再保険会社の信用低下などや再保険取引規模の縮小が起こることがある。この不安定性を補完し安定的なリスクの移転のポートフォリオを構築するための一つの方法として証券化がある。