農水省はフィリピン政府が日本政府に対して、日本が輸入したミニマム・アクセス(MA)米を同国が活用できるように要請していてきていることを5月19日に明らかにした。在日比大使館から外務省経由で16日に書簡を受け取ったという。書簡は同国の農務長官が若林農相に宛てたもの。20万tのMA米を利用できるようにしてほしいといった内容だという。
農水省は同国の意向を改めて確認し売却や援助での支援を検討していく方針で「一刻も早く対応したい」(白須次官)。これまで外国の食料支援のためにMA米を売却したことはないが、仮に売却したとしても「WTO協定上は問題ない」(食料貿易課)という。また、米国などMA米の輸出国との協議や同意は必要としないとする。
これとは別にフィリピンは米穀安定供給支援機構が保有する国産米についても、商業ベースでの購入を要請している。同機構が保有している国産米は、豊作による過剰対策として導入された集荷円滑化対策で区分出荷された米で、これまで17年産米で発動された7万tあまりが保有された。このうち5万t程度が供給可能だという。
農水省が3月にまとめた「海外食料需給レポート07」によるとフィリピンの米生産量は1000万t(07/08予測、以下同)で消費量は1200万tとなっており、輸入量は180万tの見込み。同国は世界最大の米輸入国だ。ただ、期末在庫は540万tで前年度にくらべて4.4%と減少することが見込まれている。今回の要請も6月から10月の端境期を乗り切るために備蓄を積み上げておくためだという。
◆米の確保で社会不安
原油と穀物価格の高騰が昨年後半から続くなか、今年に入ってからは米の国際価格が麦、大豆、トウモロコシを上回る勢いで急騰、4月23日は1tあたり875ドルと過去最高を記録した。
こうしたなかフィリピンでは食料価格高騰に対する抗議デモが起きるなど、米の確保が政治課題のみならず「社会不安の要因になっている」という(JA全中の国際農業・食料レター4月号)。
アロヨ大統領は世界第2位の米輸出国であるベトナム、ズン首相に米輸出の要請を行いベトナムは年間約150万tの米販売を約束したが、輸入米の入札価格は年明けに行われた前回取引よりも2割高の見込みだという。
社会不安を抑えるためにアロヨ大統領は米をため込む業者には「終身刑の厳罰を処す方針」(同)を示しているほか、市民に冷静な対応を呼びかけ貧困層に対する支援を打ち出すなど社会不安を防ぐ対策に追われているという。
また、政府は中期的な取り組みとして生産性を高めるアクションプランを打ち出し2011年までにこれまで達成したことがない100%の米自給をめざす方針を打ち出した。
同レターは、フィリピン自作農民連合会協同組合の営農担当役員の次のような指摘を紹介している。「以前であれば米を含む農産物について十分な量を国内で生産できないなら、輸入するよりも安く生産できないなら、輸入すればよいという議論が大勢を占めていた。しかし、今回の問題を契機に政府の政策担当者は食料安全保障に目を向け始めた」。