特定非営利活動法人(NPO)の日本GAP協会(JGAP=ジェイギャップ、東京都千代田区、片山寿伸理事長)が5月30日、馬事畜産会館(東京都中央区)で開いた第2回通常総会は、「審議不十分のため採決を延期する」との動議が可決され、採決できないまま流会する事態となった。
JGAPは日本版の農業生産工程管理(GAP)の開発、導入支援を行い、農業生産者に対して消費者の求める農産物を生産するための農場管理手法を提供する組織。平成17年にGAPに取組む生産者組織JGAI協会が設立され普及活動を始め、18年11月に現在の組織に変更された。
30日の総会には、19年度事業、収支決算書、20年度事業計画等の報告事項と定款変更議案などが付議された。問題になったのは、正会員の資格要件と理事の定数の変更など。これまでの資格要件は、「農業生産を行う個人、団体」を主体にしていたが、変更案はGAPの普及に賛同する個人、法人、もしくは団体として門戸を大きく広げる案が示された。また、15人以内となっている理事の定数は25人にまで10人増やし、現在、理事の過半数は農業生産を行う個人、法人、生産者団体としているのを、今後は理事のうち3分の1以上を農業生産を行う個人・法人・生産者団体とし、農産物の買い手や関連団体の理事数も同数にするという案だった。買い手側の理事候補には、ダイエー、イオン、CGCジャパン、イトーヨーカ堂、日本生協連など大手流通企業、団体の名が並んでいる。
質疑では、大幅な門戸開放は、生産者のためのシステムづくりをめざす協会の理念に沿わない、との意見が出された。また、理事数が多く、意見集約の一本化ができるか、大手流通企業のバイイングパワーに巻き込まれるのではないかと危惧する意見も出された。
執行部側は、協会が標準的なGAPを作成するためには可能な限り多くの関係者を交え、公平で透明性のある議論の場にする必要があることを強調したが、反対意見が続いた。
ここで、総会の招集文には3行で、定款の変更などとあるだけ(発言者)。これだけの大きな変更案を出席者も初めて聞かされた。議案が極めて重要な事項のため、十分な審議時間が必要なので、結論を急がずに組織内の理解を深め、「本日は全議案の採決を延期」し再度協議すべきとする緊急動議が出された。
執行部は、手続きの不備は陳謝したが、招集文送付時には協議中で議案の細部が煮詰まっていなかったため、詳細な議案は総会当日になったと釈明し、議案全体の提案を終了した段階で採決にはいった。
採決終了後、結果の発表直前に会員から、「議長が動議を却下したのは、総会の運営規則違反なので、先の動議の採否を採決」するようにと求めた。動議を採決した結果は、動議への賛成票が僅差で多数を占め、既に行った採決は無効とされ、流会となった。
次回の総会は6月下旬に開く予定。また、議案の内容自体が否決されたわけではないとして、執行部は同じ議案を提案する予定だ。