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追肥の可変作業機など「精密農業」の技術開発進む

−農水省がレポート

同じほ場でも土壌の肥沃度や水分にはばらつきがある。これを最小限にして作物の収量や品質を改善する「精密農業」が次世代の農業を先導する革新技術として注目されている。農水省の農林水産技術会議はその研究成果などを紹介する農林水産研究開発レポートNo.24を「日本型精密農業を目指した技術開発」と題して5月30日発行した。 精密農業は同一区画内の栽培管理だけでなく、ほ場が分散している集落営農や大規模法人などの農場管理に大きく貢献できる農法とされる。例えば売れるコメづくりに向けた均質性の追求には土壌のばらつきの制御は欠かせないからだ。 またコメに限らず、精密農業の栽培過程では様々なデータが収集されるため生...

同じほ場でも土壌の肥沃度や水分にはばらつきがある。これを最小限にして作物の収量や品質を改善する「精密農業」が次世代の農業を先導する革新技術として注目されている。農水省の農林水産技術会議はその研究成果などを紹介する農林水産研究開発レポートNo.24を「日本型精密農業を目指した技術開発」と題して5月30日発行した。
精密農業は同一区画内の栽培管理だけでなく、ほ場が分散している集落営農や大規模法人などの農場管理に大きく貢献できる農法とされる。例えば売れるコメづくりに向けた均質性の追求には土壌のばらつきの制御は欠かせないからだ。
またコメに限らず、精密農業の栽培過程では様々なデータが収集されるため生産履歴を明らかにするシステム構築にも役立つ。
精密農業の作業は(1)観察(2)制御(3)結果(収穫)(4)解析・計画の4段階だ。レポートはこれに沿った技術開発の現状を解説している。
観察作業のうち土壌調査では、トラクターで牽引できる装置を東京農工大が開発した。刃先の内部にセンサーをつけ、通過する土の水分と硬さ、pH、電気伝導度などを測定し、深さ15〜30センチの地中情報が連続して求められるという。
収穫適期の判定では、人工衛星や航空機などに搭載したセンサーで植物の状態を調べるリモートセンシングという方法がある。植物の状態によって光の反射率が異なる特性を利用した。携帯式作物生育情報測定装置やデジタルカメラを搭載した無人ヘリによる撮影システムなどもある。
制御段階ではGPS(全地球測位システム)を搭載して自らの位置をつかみ、場所ごとに必要な追肥や防除を行う可変作業機が開発された。小麦の収量を安定化させるために肥料と種子を可変量散布する作業機も京都大学を中心に試作された。小規模茶園用や水田用なども開発された。
収穫作業では(独)農研機構が開発したコメの収量コンバインがある。作業中に収穫物の水分と質量がリアルタイムで表示され、また一筆ごとの収穫量と平均水分量と、その変動値が表示・記録される。
精密農業はこれらによって得たデータを土壌、生育、収量の各マップにまとめ、最終的には「施肥マップ」の形に整理し、次年度の施肥計画に活用する。
また同レポートはJAなどの協力で精密農業技術の実証試験をした新潟県長岡市や宮城県大崎市の事例も紹介している。
将来展望では「精密農業は、手間ひまを惜しまない篤農技術を、センサーやIT技術を用いて再現性と効率性を持った技術に変えていくといった面を持つ」としている。

精密農業の作業サイクル

(2008.06.04)