日本の農林水産物輸出促進の一環として政府はコメの輸出増加を図っているが、昨年4月に中国政府との間で検疫条件について基本的に一致。今年5月には恒常的な精米輸出の条件が決まった。
輸出できるコメは、中国の輸入検疫条件をクリアした精米工場とくん蒸施設で精米・くん蒸されたものだけ。現在は全農パールライス東日本が管理する、神奈川精米工場のみが指定精米工場となっている。
中国向け輸出精米工場の指定を受けるには1年間のカツオブシムシ類のトラップ調査を経たうえで、中国側の検査官の現地視察を受けなければならないため、最低でも1年数ヶ月はかかる。また調査や検査官招聘にかかる費用は全て輸出者の負担となる。
実際に輸出する場合は、中国の検疫局に登録したくん蒸倉庫で3ヶ月間のトラップ調査と輸出1ヶ月前のトラップ調査をしなければならない。それ以外の検疫条件については、日本のポジティブリスト制度をクリアしていればほぼ問題はない。
◆中国向け精米輸出の説明会
農水省は6月24日に生産者や輸出業者などを対象に中国向け精米輸出の説明会を開催。約300人が集まった。
「精米工場の指定をうけたいのだが、国からの支援はあるのか」「指定をうけるにはいくらぐらいの費用がかかるのか」と、費用にかかる質問が多く出たが「今のところ国からの援助は予定していない」という。輸出に前向きではあるものの、それにかかる費用負担が生産者・輸出者の不安材料になっているようだ。
また「すでに中国へ毎年50万tほどのコメを輸出しているタイや、3万tほどのベトナムでもこんな厳しい検疫条件をクリアしているのか」と、中国側の出した検疫条件を疑問視する関係者もいた。
「玄米での輸出はできないのか」という質問も出たが、「検疫条件が非常に困難になるため、中国からの許可はおそらく出ないだろう」という。
説明会ではJA全農が昨年から今年にかけて行った輸出状況を紹介。昨年6月に第一便として24t、第二便として昨年末から今年はじめにかけて100tの計124tを輸出している。輸出銘柄は新潟産コシヒカリと、宮城産ひとめぼれなど。
日本産米は中国の一般米と比べて値段が25倍ほどにもなる。中国の高級米と比べても10倍ほどの値段だ。そのため中国では贈答用として購入した人がほとんど。
中国の流通関係者は、日本産米の輸入が解禁されたことは大きなニュースとなっており、希少性や話題性も手伝って第一便は好調な売れ行きだったが、継続的な販売のためには価格引下げが必要だと分析している。
購入者のアンケートでは、購入理由の1位は「美味しいから」が4割以上。ほかにも「健康によさそう」「安全」など好意的なイメージが上位を占めた。