水産物でも食料危機が迫っている。世界有数の好漁場を持つ日本は1980年代前半までは水産物自給率100%を誇っていたが、06年には59%に落ち込んだ。そこへ燃油の暴騰だ。A重油が1kl13万円になれば漁業者の3割が廃業に追い込まれると全日本漁協連合会(JF全漁連)は推計している。
全体の食料自給率は39%だが、うち3%分を国内漁業が支えている。これが崩壊すれば自給率はさらに押し下げられる。
漁業の生産コストに占める燃油費の割合は、沿岸漁船漁業では06年が19%、それが08年6月には30.2%に上昇しているとJF全漁連は推測している。
バス、トラック、タクシーなどの業界と比べても燃油費のウェイトが大きいため価格暴騰が漁業に与える打撃は非常に大きい。
また小売価格に占める漁業者の受取り価格は平均24%で、農産物の3〜5割に比べて大幅に低い。水産物流通の特殊性から、中間流通コストが大きいのだ。
受取り価格からはさらに市場の手数料や氷代や箱代が差し引かれ、その上、漁網や漁具などの値上がりがあって漁業者の手元に残る金額は急減している。
こうして漁に出ると赤字になるという業種が広がっており、すでに小型イカ釣り漁業者は一斉休漁を余儀なくされた。イカ釣りは集魚灯をつけるため他の漁よりも燃油の使用量が多いためだ。
漁業のピンチに直面してJF全漁連や(社)大日本水産会などは漁業者の経営継続を図る緊急政策を国に求め、併せて投機資金の国際石油市場への無秩序な流入を規制する国際規制を求めている。
7月15日には「燃油価格暴騰から食料・漁民を守れ!」と訴えて「漁業経営危機突破全国漁民大会」を東京・日比谷野外音楽堂で開く予定。また7月中旬には全国一斉の休漁行動を実施することを検討中だ。
一方、輸入のほうも懸念されている。水産物の輸入関税はガット・ウルグアイラウンド以降、4.1%と、農産物よりも大幅に低く、輸入は増大を続けていたが、ここ3カ年は数量が減少している。新興国などでの需要が増えたからで、このため海外での「買い負け」という事態も起きている。
農畜産物と併せ、水産物を含めて食料全体の需給ひっ迫を打開しなければならない深刻な事態に迫られている。