7月4日、東京・大手町のJAホールで「国産採卵鶏を守る緊急集会」が開催された。
現在、国内では約260万トンの鶏卵が生産され自給率は95%(重量ベース)だが、その卵を生産する鶏の「種」は94%が外国から輸入されており、国産採卵鶏の占める割合はわずか6%に過ぎない。
しかも、海外で蔓延している鳥インフルエンザなどの鶏病の影響で「種」の輸入停止と解除が繰り返され、非常に不安定な状況にあるという。このまま外国の採卵鶏に依存した状態が続き、もし鳥インフルエンザなどによって「種」の輸入が停止すると、安価で良質なたん白源である鶏卵を確保することが難しくなるといえる。
一方、飼料価格の高騰は採卵鶏生産者の経営を直撃している。日本鶏卵生産者協会の試算によると、「鶏卵1kg当たり生産コストはこの1年半で約60円上昇し、193円」で、採算ラインは233円なので、現状の相場では採算がとれないといわれている。
鶏卵が長年にわたって「物価の優等生」といわれてきた背景の一つに、昭和60年に12万戸以上あった採卵鶏の飼養戸数が平成19年には3460戸と、この20年あまりで97%も減少。19年に10万羽以上飼養している戸数は全体の11.5%だが、飼養羽数は62%を占めているというように大規模生産者に寡占化し、彼らが鶏卵増産をすすめていることがあるといえる。
そして6%の国産採卵鶏を多く飼養しているのは、「農家養鶏」といわれる小規模生産だ。その小規模生産者が飼料の高騰と卵価低迷によって経営の存続が極めて厳しい状況に追い詰められている。そして小規模生産者の経営が存続できなくなれば、国産採卵鶏のシェアは「ゼロ」となり、「種」の保存すらできないことになる。
こうしたなか「日本の気候風土の中で育種した種を保有するということは、食の自立を可能にすることであり、食の健全化をはかるうえで大切なこと」だが、「それが危機的状況に瀕している」。「食の生産は一極集中ではなく分散化して生産されていくことが危機管理上も、食の安全性さらには生産体制を含めた健全性を担保する」ことから「飼う側の生産者」と「食べる側の消費者」が「一緒に参加し自給ということを考えながらお互いに理解し合い」「国産鶏を維持拡大するよう」社会的に働きかけるためにこの緊急集会が開催された。
緊急集会の実行委員会は、(農)会田共同養鶏組合、(株)秋川牧園、(農)旭愛農生産組合、(有)幾見養鶏、(有)鹿川グリーンファーム、(農)黒冨士農場、常盤村養鶏農協、(有)野地養鶏場、美濃愛農産直という生産者、国産採卵鶏の生産・育種改良に取り組んでいる(株)後藤孵卵場、さらに全国養鶏経営者会議、BM技術協会といった生産者団体。そして、消費者団体として大地を守る会、パルシステム生協連、生活クラブ生協連が参加。農水省生産局が後援、採卵鶏の育種改良に取り組んでいる唯一の公的機関である(独)家畜改良センター(岡崎牧場)とJA全農が協賛団体として名を連ねている。
当日は、全国から生産者・消費者300名以上が参集。国産採卵鶏の現状への理解を深めるとともに「純国産鶏を維持拡大して、日本の畜産・農業の復活にむけ取り組むことを宣言」する「集会宣言」を採択した。