選考委員会 今村委員長 |
農協協会 中川会長 |
表彰式は7月3日、都内の東京會舘(アーバンネット大手町ビル21階)で開き、(社)農協協会の中川敞行会長が開会あいさつ。
その中で「農協人文化賞は農協法公布30周年を記念して創設された。それから30年。通算で60年を経た。つまり農協法は今年、還暦を迎えたことになる。その間、いろいろなことがあったが、受賞候補者は年々増えており、今回の表彰者数は過去最高となった」と報告した。
創設以来の受賞者数は今回の18氏を加えると合計265氏となる。
次いで選考委員会の今村奈良臣委員長が経過報告の中で「 受賞者の『体験と抱負』が農業協同組合新聞に載っているが、そこには活動の歴史と、これからの新しい活動の路線が提起されている。これを全国の農協人の1つの指針として活かしていただければと願っている」と提案。
「その意味で、こ の賞は明日を切り拓く農協運動の灯ともなる」と述べた。(別掲)
続いて今村委員長から18氏に表彰状と賞牌がそれぞれ贈られ、そのあと、受賞者たちは一言ずつ喜びのコメントを語った。会場には受賞18氏の功績と栄誉を讃える拍手が続いた。受賞者のうち岩手・JAいわて花巻の藤原徹組合長、石川・JA松任の北川巖代表理事組合長は都合で出席できなかった。
◆農協運動の原点回帰などを強調 受賞者たちがコメント
受賞者たちは記念撮影や交流昼食会のあと記念シンポジウムに臨んだ。
シンポは大手町のJAビル国際会議室で開き、最初に受賞者紹介があった。ずらりと壇上に並んだ受賞者たちは、それぞれが受賞に際してしたためた色紙を掲げたりして経験や所感、そして提言などを語った。
多彩な発言の中で、とりわけ強調されたのは「もう一度、協同組合運動の原点に立ち帰ること」という指摘だった。
「最近の農協運動は何か1本筋が通っていない感じだ。だから運動に活力がない。そこで原点を再確認しようではないかと訴えて色紙には『原点の再確認』と書いた」、「60年を経た農協組織は、ある意味で金属疲労を起こしている面がある。しかし、もう1度よく見直すと、まだまだやらなければならないことが相当ある」といった発言が相次いだ。
「原点は連携だ。組合員、地域、JA間、消費者とのさらなる連携がキーワードになるだろう。色紙にはその思いをこめた。幅広い連携を具現化していきたい」との強調もあった。
「昔、産業組合時代に青年連盟という組織があり、先鋭的な活動で産業組合の地方組織に活気を与えた。農協運動活性化のためには青年たちのエネルギーが必要だ。農協には若い人を育てる配慮がもっとほしい」との提言も続いた。
農政については「30%以上の減反をしながら一方で77万tも輸入(MA米)するというコメ政策の状況をどうみるか」という指摘や「農家に後継者がいないのは農業では暮らしていけないからだ。農業所得の向上こそ最も基本的な問題」などのコメントもあった。
今回からは厚生福祉事業部門も表彰対象となったため受賞者は▽山村へき地の医師不足▽厚生連病院の老朽化▽改築の困難性ーーなどを報告、そして保健活動に重点を置いた厚生連病院の事例などが語られた。
また一般文化部門で生協分野から選ばれた受賞者は「生協は農業なくしては存在し得ない。子殺し・親殺しなどが続発するすさんだ社会にあって命をはぐくむ農業の役割と働きは大きい。食べる、生きる、子育てをするという生協と農協の連帯こそ未来をつくるものだと思う」と農協陣営にエールを贈りながら、受賞への感謝を述べた。
シンポジウムの参加者約150人は、運動の先達である受賞者のコメントにうなづきながら惜しみない拍手を続けた。
シンポは受賞者のうち7氏がパネリストとなって議論を展開した。コメンテーターは三重大学の石田正昭教授、コーディネーターは選考委員会の今村委員長が務めた。
◆記念パーティもにぎやかに
この後、農協人文化賞受賞記念パーティに移り、農協協会の中川会長のあいさつに次いで今村委員長が受賞者を紹介。受賞者を囲む和やかな懇談が続いた。
来賓あいさつではJA全中の土屋博常務、JA全農の菊池健久常務、農林中金の松本浩志専務、JA共済連の杉山健二常務、全国厚生連の沼田清剛理事長がそれぞれ祝辞を贈り、東京農工大の梶井功名誉教授の音頭で乾杯した。
また山田俊男参院議員も駆けつけてあいさつ。宴の中では島根県・JAいずもの萬代宣雄組合長、JA広島県中央会の村上光雄会長、愛媛県・JAえひめ南の林正照組合長、宮城県・JAみやぎ登米の阿部長壽前組合長が祝辞を述べ「今回の受賞によって長年のご苦労が報いられたと思います。今後は後輩の指導にいっそうのお力添えを」などと今後の指導に期待を寄せた。
その中で、農水省の米システムのあり方検討会のメンバーである阿部氏は「世界の食料争奪戦の中で今後は日本の農業に追い風が吹くのではないかと思う」と指摘し、その場合「JAグループには追い風を受ける力があるのかどうか。ぜひ新しい風に対応できるJAグループを目指す議論を進めてほしいと思います」と訴えた。
中締めではJA共済連の前田千尋前理事長が「シンポジウムでは、明日のJAの活性化に向けて幅広い提言をいただいたが、我々OBとしてはもっと多くの現役世代に聞いてほしい貴重な発言内容でした」との感想で締めくくった。
JA全中 土屋博常務 |
JA全農 菊池健久常務 |
農林中金 松本浩志専務 |
JA共済連 杉山健二常務 |
全国厚生連 沼田清剛理事長 |
山田俊男参院議員 |
東京農工大 梶井功名誉教授 |
JAいずも 萬代宣雄組合長 |
JA広島県中央会 村上光雄会長 |
JAえひめ南 林正照組合長 |
JA共済連 前田千尋前理事長 |
《第30会農協人文化賞受賞者》 【一般文化部門特別賞】 【一般文化部門】 【信用事業部門】 【共済事業部門】 【営農・経済事業部門】 【厚生福祉事業部門】 |
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