農政・農協ニュース

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米の需要量上方修正へ

−過剰作付け解消は必須

 農水省が7月はじめに公表した都道府県水田農業推進協議会の報告に基づく20年米の生産調整の実施状況によると、全国の面積換算目標154万2000haに対し、6月中旬時点で加工用米を除く作付け見込み面積は157万2000haとなっている。  過剰作付け県が17県あり目標オーバー面積が計4.4万haとなったが、一方、超過達成県が30都道府県あり超過面積が1.5万ha程度あることから、差し引き2.9万ha程度の目標オーバーだ。  ただし、19年産では農水省統計の作付け面積より5万haほど少なく、協議会データとのかい離が問題となったことから、その解消に努めたが農水省は現時点でも過...

 農水省が7月はじめに公表した都道府県水田農業推進協議会の報告に基づく20年米の生産調整の実施状況によると、全国の面積換算目標154万2000haに対し、6月中旬時点で加工用米を除く作付け見込み面積は157万2000haとなっている。
 過剰作付け県が17県あり目標オーバー面積が計4.4万haとなったが、一方、超過達成県が30都道府県あり超過面積が1.5万ha程度あることから、差し引き2.9万ha程度の目標オーバーだ。
 ただし、19年産では農水省統計の作付け面積より5万haほど少なく、協議会データとのかい離が問題となったことから、その解消に努めたが農水省は現時点でも過剰作付け面積はこの数字より4万ha程度多いとしている。農水省は引き続き統計と協議会データとのかい離のつめと、過剰作付け分については非主食米としての販売契約を指導する。生産調整の取り組みの最終確定は現地確認終了後の9月で今回の公表数値は県ごとの達成・未達成を判断するものではないが、農水省は最終的に過剰となる県に対する扱いをどうするかを検討していく必要があるとしている。
 JAグループの中間まとめでは地域協議会に参加している生産調整方針参加者のうち、JAに参加している農業者では、面積換算目標137万haに対して、作付け見込み面積は136万1000haと9000ha程度少ない。
 ただし、出来秋に過剰作付けが見込まれる県は、今後とも行政や関係機関と連携し飼料用米などの新規需要米の契約締結の推進を収穫段階まで粘り強く実施することがJAグループとしても必要だとしている。

◆米の需要量は増える

 一方、農水省が7月15日に自民党農業基本政策小委員会に示したデータでは、19/20年(19年7月から20年6月)の需要量は853万トンと推計した。昨年11月時点で策定した需要量見通し833万トンより20万トンの増加だ。
 総務省の家計調査では1世帯あたり(2人以上の世帯)の米の購入数量は今年1月から5か月連続で前年を上回っている。農水省が米販売業者に行ったヒアリングでも「家庭用販売を中心にかなりのペースで米の消費が拡大していると実感」、「例年、需要が低下する夏場も米販売に力を入れる傾向が強い」、「小麦、バター等の価格上昇に加えて中国産冷凍食品問題があり、米の販売は好調」、「米を目玉商品として販促展開を行っている」などの声が上がり、比較的価格が安定している「米に需要がシフト」したとみている。
 こうしたことから、7月末に作成する基本指針では19/20年の主食用需要量を853万トンに修正するとともに、修正後の需要量を前提に、20/21年(20年7月から21年6月)の主食用需要量を昨年11月時点の819万トンから831万トンへと12万トン上方修正する予定だ。

◆備蓄運営のあり方も検討へ

 ただし、需要量が上方修正されたとしても、現時点の生産調整の取り組み状況では、作況が100でも依然、過剰作付けにある。12万トンの需要増が見込まれても作付け面積は単純に単収500kgとしても2.4万ha。現時点の作付け面積からすれば生産調整には「気を緩めることなく取り組む必要がある」(農水省)としており、この日の基本政策小委でも、「引き続き過剰作付けの解消に全力をあげること」がこの夏の「宿題」とされた
 その一方、生産調整の実施者と非実施者との公平確保の問題も焦点となる。
 昨年末の政府買い入れによって価格の大幅下落に歯止めはかかり、さらに小麦製品等の価格上昇で米の販売は好転し、卸間売買や政府米試行販売では価格は上がった。しかし、このメリットは生産者の手取り価格には反映されおらず、また、政府買い入れによる価格の歯止め効果は生産調整も未実施者にも及ぶ。
 こうしたことから農水省は政府買い入れを生産調整実施者のメリットとし、一方で備蓄運営上、必要な量を計画的に確実に買い入れるため、「備蓄米」をたとえば、播種前契約で政府買い入れとする方向も示した。
 今後、検討を進め8月初めには20年産対策と21年産以降の産地づくり対策など生産調整対策、経営安定対策と合わせて与党に提示して議論していく方針だ。

(2008.07.16)