JAグループや日本生協連、JF全漁連、全森連などの12団体が加盟している日本協同組合連絡協議会(JJC)は、毎年7月上旬にJAビルで国際協同組合デー記念中央集会を開催している。今年は7月8日に行った。 同時期に環境問題を主要テーマとした洞爺湖サミットが開催されていたこともあり、環境問題が大きく取り扱われた集会となった。 東京大学生産技術研究所の山本良一教授による記念講演も「環境危機に直面する人類と洞爺湖サミットの課題」がテーマだった。 氏は地球環境の危機的現状を報告し警鐘を鳴らすとともに、日本人の危機感の無さと対応の悪さを取り上げ、辛辣な意見を述べて拍手を浴びた。以下はその概要。(関連記事) |
◆温暖化は加速ではなく暴走する
山本良一教授 東大生産技術研究所 |
07年1月のIPCC(気候変動に関する政府間パネル)第4次報告書を見ると、温暖化が加速しているのがわかる。このままいけば、20年ごろには温暖化が暴走をはじめるだろう。
例えば、07年9月には北極海氷の面積が413万km2となり、史上最小記録を更新した。この数字は60年代9月の半分ほどしかない。北極海の氷が消滅するのも時間の問題だ。
東アングリア大学のティモシー・レントン教授は16年ごろにはグリーンランド氷床が融解するだろうと述べているし、NASAのジェームス・ハンセン博士は今世紀中に海面が5m上昇することも有り得ると発表している。
このまま温暖化がすすめば、最悪の場合50年頃までに地球の表面温度は3℃あがり、西南極大陸の氷床崩壊やアマゾン熱帯雨林の砂漠化などがおきるだろう。
今が地獄の一丁目だとしたら、50年頃は五丁目ぐらいまですすむことになる(図参照)。
◆日本人は環境問題に無関心すぎる
世界の温室効果ガス排出量は94年の時点で年間394億tだったが、10年後の04年には490億tに達している。
それに対し97年の京都議定書での目標はたった10億tの削減だった。しかもその10億tですらアメリカが批准せず、カナダは諦めて、半分の5億tも達成できそうにない。日本でチーム・マイナス6%なんてやってるけど、そんなのは焼け石に水。戦闘機に竹ヤリで立ち向かうようなものだ。
実際には6%どころではなく、8割の削減を目指さないといけない。
だから政府が6月9日に「低炭素社会・日本をめざす福田ビジョン」を発表して、50年までに60〜80%の削減を目標に掲げたのは評価できる。少し遅くなったけど、ようやく日本の政治家も本腰を入れてきたと言える。
それにしても日本人は本当に環境問題や気候変動に無関心で危機感がない。なぜ、こうなってしまったのか。世界が全地球規模で集団自殺をしようとしているのに、誰も真剣に環境問題を考えようとしていないように見える。
現在は日本人の農家比率が5%ぐらい。私が子どものころは7割ぐらいが農業をやっていたから、今よりももっと環境とか天変地異とかに敏感だった。日本人が環境問題に疎くなったのは、農業人口が減ったからではないだろうか。
危機感がなくて目先の経済発展しか見えてないから、日本経団連のように「我々はあらゆる規制に反対する」と言いだす人たちが出てくる。彼らは独自の削減目標を定めて独自でやっていくと言っているが、実質的には温室効果ガス削減に協力しないということ。何を考えているのかわからない。
本当に低炭素社会をめざすなら、例えば輸送コストやエネルギー削減のためにも食料自給率の向上を推進するべき。国内にあれだけの休耕田があるなんて信じられない。もっと米を作って食べるべきだろう。1日1個のおにぎりを余分に食べるだけでも違ってくる。
20世紀はハイテクで日本が成長した時代だが、21世紀は食とエネルギーで成長する時代。今こそ日本の政策の一大転換期だ。
◆地球温暖化に宣戦布告しなければいけない
ほとんどの先進国は、日本と同じく温室効果ガス削減目標を50年までに60〜80%と設定している。これは大変な努力を要するが、やってできない数字ではない。
目標実現のためには、火力発電所の全面廃止や太陽光や風力などの再生可能エネルギーへの転換、バイオ燃料や電気自動車の開発、環境税の導入など法整備するべきことがたくさんある。地方自治体や企業側も輸送や移動の際、より環境負荷の少ない公共交通機関を利用するとか、グリーン購入を推進するとかの努力が必要だ。
最近では環境技術や環境ビジネスが拡大を続け、成長産業になっている。ドイツのローランド・ベルガー社は05年の世界の環境技術市場規模が1兆ユーロ(約180兆円)あり、今後も年間5.4%で成長を続けると予測している。環境ビジネスの発展は、新たな雇用や新技術をも産み出している。またより厳しい環境規制が企業を強くし、競争力を高めることになるという意見も見られる。
政府も自治体も企業も個人も、地球温暖化と戦争をするぐらいの心意気を持って、「地球温暖化に宣戦布告」しなければいけない。