WTO閣僚会合が開かれているジュネーブで7月22日、世界の農業者団体が集まり「食料危機はWTO合意で解決されるものではない」と訴える共同宣言を採択した。
共同宣言では、現在の食料危機の原因は「貿易が不足しているためではなく、明らかに生産が不足しているため」と指摘。2000年から06年にかけて農産物貿易は世界の農業生産の2倍の速度で増加しているが、これは小規模農業者の犠牲のもとに大規模な企業的農業者や多国籍企業に利益をもたらしているもので、各国で「もっとも必要とされている農業・農村開発の妨げとなっている」と訴えている。
そのうえで、高まる食料需要を満すには世界の農業者が収益を上げ持続可能な方法で生産力を増強させるような「手段」と「動機づけ」が必要だとし、「自由化の度合いは軽減されなければならない」と強調、しかし、現在のWTO交渉での提案内容は、世界の多くの国の生産力を弱めるものであり「悪い合意ならしないほうが良い」と宣言した。
また、基本理念として(1)自給率向上と食料安保確立のためすべての国に国内消費向けの食料生産を行う権利が付与されなければならない、(2)食料供給と価格の安定をはかるため貿易ルールで供給管理など政策措置が認められなければならないなどを掲げた。
そのうえで議長案に対する具体的な考え方として▽関税削減はすべてのWTO加盟国の立場が反映されなければならない、▽「重要品目」の十分な数の自主選択と、これらの品目のセンシィビティに配慮して関税と関税割当の双方が最大の柔軟性をもって取り扱われなければならない、▽いかなる形態の上限関税もまったく受け入れられない、▽輸入急増や価格変動に対処するセーフガードは途上国と先進国の双方にとって維持されなければならない、などを提示している。
共同宣言に参加したのはアジアでは、JA全中、全国農業会議所と韓国農協中央会、インド協同組合中央会、スリランカ独立農業者ネットワークのほか、アフリカ5か国2団体、カナダ6団体、ヨーロッパ30か国6団体。