「米粉使用という話題性だけでなく、魅力のある商品を作って販売につなげなければいけない」と、米粉ビジネスの拡大についてJA全農営農技術センターの柴田温氏は産学官交流セミナーで強調した。
(独)農業・食品産業技術総合研究機構(農研機構)が7月23日にJAビルで開いた今年度2回目のセミナーで、テーマは「国産米の利用拡大に向けて〜米、米粉のフロンティア〜」。農研機構の食品総合研究所などから計5人の研究者が集まり、それぞれの専門分野から米粉製造技術や米の食味評価手法の紹介、米粉を使用した製パン試験の現状などについて発表した。
柴田氏は小麦粉の代替用途や自給率の向上などで米粉ニーズが高まっているが▽米粉は低グルテン性なので薄力粉代替以外では乳化剤・増粘剤の添加が必要▽30〜40ミクロン程度までの微粉末化技術の開発・導入が必要など米粉の特性を解説し、「米粉普及のためには多収米品種の開発や米粉製造施設への支援などによるコストダウンと、生産助成や契約生産による原料確保が必要だ」と、米粉ビジネス拡大のための課題を指摘。
また「現段階では米消費の追い風は吹いていない。小麦粉売り場に米が置かれるようになって初めて追い風だ」と、さらなる米消費の拡大と自給率の向上や日本農業の活性化を目標に掲げた。
農研機構低コスト稲育種研究チームの根本博氏は業務用原料用の水稲品種を紹介した。
米粉パンに適する17〜20%ほどの中アミロース品種として、関東以西で栽培できる超多収品種「タカナリ」を紹介。ご飯としての食味は良くないが、10aあたり800kgという多収性から加工用として期待できる。また、米粉麺に適するのは、炊いた時に粘りが少ない高アミロース品種(25〜35%)だという。東北南部以西で栽培できる「北陸207号」を紹介した。
低コスト生産が可能な品種では倒伏に強い直播品種の、「ひとめぼれ」並みの食味を持つ「萌えみのり」と、いもち病抵抗性が強い業務用品種「ミレニシキ」。バイオエタノール原料としては、JAにいがた南蒲で試験栽培されている「北陸193号」がある。標準栽培で950kg、多肥栽培で957kgを記録した。また飼料用には、収量性が高く耐倒伏性や耐病性を備えた「クサホナミ」「べこあおば」などがある。
会場には新品種の玄米や実際に市販されている米粉が展示されたほか、米粉で作ったロールパンや食パンの試食コーナーも設置。セミナーに訪れた人たちにも「美味しい」「食感がいい」と好評だった。