今回の閣僚会合にあたってわが国の最優先事項である重要品目の数については総タリフライン数の「10〜15%」を主張することとしていた。
しかし、若林農相は閣僚会合が始まる前に現地で「最低8%はとりたい」と発言した。こうした判断について記者会見では「10%以上、とG10諸国で決めていたからその数字は受け止めていた。しかし、G7(日米欧などの少数国会合)に入っているのは日本だけ。相場感が出てくると10%では相手にしてもらえないと肌で感じてきた。まともに真剣に考えてもらえないのでは言ってみるだけでつぶされてしまうおそれがあると考え、本当の交渉に入る前に最低8%は取りたい」と、話した。交渉前にこう表明したことについてはG10諸国から「どうしたのかという声はあった」といい、G10として10%以上を「まずは強く主張した」が日本としては方針を転換し最低8%の実現をめざして交渉に入ったことを明らかにした。
交渉再開については不透明だが、今後協議する場合のベースとなるモダリティ案は「シングルアンダーテイキング(農業以外の非農産品分野も含めた一括受諾方式)だから、どこをとってというものではなく、全体の交渉の過程で示されたと理解している」と述べながらも、重要品目、関税割当数量の拡大などの事項についてはファルコナー議長案をもとに「歩み寄ってきている」とし、「4〜6%」となっている案について「これを念頭に置いて次の展開は分からないが、我々の主張が理解してもらえなかった部分は、(日本農業の)体質強化を進め今後出てくるであろう交渉に動じない体質をつくり、われわれの主張が世界全体に受け入れられるようにしなければ」と話した。
農水省としても重要品目数の問題については「全体のバランスのなかで8%を求めていく」(農水省国際部)としている。
同時に農相が会見で繰り返し強調したのは、今後の日本農業の体質強化だった。
「(交渉を通じて)日本の主張に厳しい見方があった。世界がそういう厳しい見方をしていることはしっかり受け止めなければならない。日本の農業、農産物貿易は世界のなかの一部。お互い事実として認識したうえで日本の農業の体質強化をしていかなければならない」。
また、重要品目問題についても「一般品目(扱い)にしてもかなり(関税)削減率は多くても何とかやっていけるというものは、競争力をつけることができればそっちで進めていく」とも発言、「相対立する人の主張が弱まるわけではないから政策転換をしなければならないという重い課題を抱えることになった」との認識も示した。
同時に食料自給率、自給力の向上を政策として重視するとも表明したが、「いたずらに補助を前提として足腰の弱いものをつくっても、補助自体に(他国から)揺さぶりをかけられたら弱い。将来展望としては自力をつけることが必要」と国内農業改革を急ぐ考えを示した。
◆宮田JA全中会長が談話
JA全中の宮田勇会長は7月30日、今回のWTO閣僚会合の結果について次のような談話を発表した。
「JAグループは7月16日の全国代表者緊急集会では『悪い合意ならしないほうがよい』と決議し強い決意をもって取り組みを進めてきた。交渉は数度にわたり、きわめて厳しい状況に直面したが確固たる決意に基づき上限関税の断固阻止、重要品目の十分な数の確保や自主指定など政府・与党と一体となって揺らぐことなく毅然として訴え続けてきた。政府・与党の決裂も辞さない強い姿勢によって輸出国の理不尽な対応をはね返すことができたことは大きな成果。食料増産による食料主権の確立は急務の課題。国民の理解と支持を基本にJAグループの最重要課題として取り組んでいきたい」。