6月21日、愛媛大学農学部構内において、太陽光利用型の大規模「知的植物工場システム実験設備」の開所式が行われた。この実験設備は経済産業省による「平成19年度地域新生コンソーシアム研究開発事業」の一環で、井関農機(株)が愛媛大学と共同して設置を進めていたものだ。
現在日本では、世界的に食料が逼迫化する中で、食料自給率の向上や、安全、安心、安定的かつ効率的な食料供給システムの構築が喫緊の課題となっているが、その解決策の一つが植物工場といわれている。
太陽光を利用した植物工場は、環境対応、省エネルギー工場として注目されている。同設備では、直接植物に現在の状態を聞く「スピ−キング・プラント・アプローチ」(SPA)の概念を取り入れ、植物の診断をおこなってから、適切な環境制御を行う知的植物工場の確立を目指し、様々な実験や研究をしていく。
知的植物工場システムに関する研究は、高知大学、香川大学、企業が連携して行っており、平成20年度に新たに採択された経済産業省「地域イノベーション創出研究開発事業」により、更なる推進を図っていく。
そして、栽培環境ー生育診断ー果実収量・品質の関連を明らかにする生育モデルと、そのセルフチューニングシステムを開発し、全国各地にある植物工場に、より適切な情報を発信していく。これらの活動により新世代の食料供給システムの確立を目指していく。
◎設備の主な仕様
1.総面積:525m2
○栽培エリア=幅:19.2m、長さ:24m、軒高:4.2m、面積:約461m2
○準備・研究用スペース=幅:4m、長さ:16m、軒高:4.2m、面積:64m2
2.栽培装置仕様
○栽培様式:長期多段栽培(吊型栽培ベッド)
○環境制御:複合環境制御
○給液制御:養液回収再利用型、養液殺菌装置(熱処理)、給液区画3区画
◎主な研究
1.各種SPA技術の実用規模への適用
2.自律走行ロボットの開発(工場内自律走行)
3.自走式植物生育診断装置の開発
4.植物生育診断情報に基づく環境制御システムの開発
5.果実の経時的品質評価システムの開発(近赤外線分光法による糖度他成分情報予測)
◎参加団体
・愛媛大学
・井関農機(株)
・経済産業省産業技術総合研究所 四国センター
・愛媛県農林水産研究所
・愛媛県産業技術研究所
・香川大学
・高知大学
・エフエーシステムエンジニアリング(株)