8月7日に公表された政府の月例経済報告は、2002年から始まった景気拡大について事実上、景気後退宣言をしたが、「後退は09年の半ばまで続く」ものの「落ち込みの程度は軽微」とする改訂経済見通しを農林中金総研が8月18日に発表した。
この「08〜09年度改訂経済見通し」では、今回の景気後退の要因を(1)原油などの資源高、(2)米国経済の減速という外部要因だとし、国内要因によるものではなく「外的ショックによる景気の途中屈折」(南武志主任研究員)だと指摘した。それを裏付けるものとして製品在庫率の上昇など企業部門に「過剰感」がないことを挙げた。景気の成熟化に至る前の失速、という分析だ。
そのために景気悪化の程度は軽微と見通すものの、日本経済は輸出依存体質のため、09年前半に持ち直しの可能性のある米国経済を前提に、この後退局面は09年半ばまで続くとした。
景気の現状は、原油・穀物などの高騰によるコスト上昇に企業は見舞われているが、需要が弱いなかで価格転嫁ができず収益を大きく圧迫、その結果、人件費を極力抑えるという姿勢を継続しているとする。一方、家計にとっては賃金が伸び悩むなか、ガソリンや食料品など価格上昇で消費マインドが悪化、こうした消費抑制は企業の売り上げが思うように伸びないことにつながり、それがまた人件費抑制を継続させるという悪循環が発生し始めている、と指摘している。資源高による日本経済の影響としては、GDPの5%もの所得が資源国など海外に流出しているというデータも示されてる(4−6月期)。
ただ、7月中旬をピークに原油などの国際商品市況は調整局面に入っており、価格高騰の「一服」は企業・家計のマインド悪化に歯止めをかける可能性があるとも指摘した。
景気回復の条件は(1)原油などの資源高騰がひとまず落ち着くこと、(2)米国をはじめとする海外経済の下げ止まり、という外部要因が取り除かれることに尽きる、とした。ただし、70年代、80年代のオイルショック時には原油高騰が止まってから1年から1年半ほど後に景気回復に向かっていることから、企業や家計が「対応力をつけるには時間がかかることは避けられない」という。
景気が後退局面に入ったことを受けて、08年度実質GDP成長率は6月予測よりマイナス1.3%の0.4%と大幅に下方修正。09年度は1.3%成長と予測したが、潜在成長率とされている1%台後半を2年連続して下回ることから、景況感の改善はあまり見込めないだろうと予測した。