※8月4日に卸売価格が上昇したのは、ダイコンの緊急需給調整を行ったため。それ以降はダイコンが全体価格を押し上げているが、ダイコン以外の品目は変わらず低い水準。 (画像をクリックするとPDFファイルが開きます) |
今年の野菜出荷量はほぼ平年並みだが、卸売価格は低迷を続けており、農水省では「原因がわからない。現在、調査と検証をすすめている」と困惑している。
東京都中央卸売市場の指定野菜14品目の平均価格は7月10日ごろから平年を下回り、一部品目を除いて平年よりも2〜3割ほど(20〜30円程度)安い卸売価格で取引されている。これほどの安値が続くのは平成12年以来だという。
品目別ではハクサイやレタスが3割安、キャベツやニンジンが2割安となっている。ダイコンだけは8月上旬に緊急需給調整を行い平年並みに回復したが、その他の13品目は8月中旬になっても落ち込んだままだ。
◆安い卸値、店頭価格に反映されず
JA全農園芸農産部園芸流通課の中田哲也課長は「出荷量や生産量はほぼ平年並みなのに、卸売価格があがらないというのはこれまでにない状況だ」という。
卸売価格が安いのは消費者にとって朗報だという報道も一部にあったが、卸売価格が低迷しているにもかかわらず、実は店頭価格は安くなっていないという実態がある。中田課長は「市場の卸値が安いのに店頭価格が高いというから、市場流通を基本としている生産者の間には不信感や危機感が高まっている」と、生産サイドの窮状を語る。
JA全農が独自に行っている店頭価格の調査などでも、卸売価格とは釣り合いが取れない値段がついている場合が多いという。
例えばキャベツであれば1ケース約8玉で卸値が600円であれば、店頭では1玉98〜128円ほどが適正価格となるが、中には1玉158円や198円という高値をつけている量販店もあった。
「量販店の値決めは1週間に1回の場合が多いので、市場価格がすぐには店頭価格に反映されないものだが、それにしてもこの値段はおかしいと思う。しかしそれでも赤字覚悟で損して売っている量販店が多いという。生産側も小売側もみんな赤字になっているのが現状だ」と、中田課長は言う。
◆全国的なキャンペーンで野菜消費の拡大を
「JAグループでは、なぜこのような状況になっているのか、急いで調査と分析をすすめている」が、その要因の1つに野菜消費量の減少があると分析している。
農水省や厚労省の調査によると、平成17年の1人あたりの野菜消費量は年間96kgで、8年に比べて10年間で10kgも減少した。世代別の消費量では、特に若年層で低迷度合いが強い。20〜39歳では1人1日あたりの平均摂取量が約235g、19歳以下では約225gとなっている。15歳以上の目標摂取量である1日350gの3分の2ほどしかない。
若い世代が野菜を食べないと次の世代でも野菜離れがすすむと危惧し、JA全農では食農教育やベジフルセブンなどの運動に積極的に協力している。
また8月31日の「やさいの日」には、東京・丸の内oazoや首都圏の各量販店で野菜消費拡大のキャンペーンを開くほか、全国の全農県本部が、各都道府県の主要都市の駅前や街頭で一斉にパンフレット配布などの街宣活動を行う。
「野菜が売れないからといって、それでは単純に値段を下げればもっと売れるのかというと、そんな簡単ではない。まずは野菜をたくさん食べてもらうように訴えていく努力をすることが必要だ」と中田課長は言い、今後もJAグループをあげて消費拡大の運動を広げていく方針だ。