茂木守 JA全中会長 |
畠山正夫 JA全中副会長 |
JA全中と全国農政連は8月26日、東京都内で「原油・肥料・飼料高騰対策全国代表者緊急集会」を開いた。
茂木守JA全中会長は、原油などの高騰が農業経営を直撃している現状を「経営努力で解決できない未曾有の危機」と強調、現場では「どうやって生活し営農を継続していくか」と苦悩していると指摘し、「世界的に食料安保が求められているなか政府は食料自給率50%を目標にしたが、その実現の前に生産者が破綻したのでは何の意味もない。国民の食料の安定供給という責任をまっとうするためにも何としても緊急対策の実現が必要だ」と訴えた。
▽ヒートポンプや多重カーテンなど省エネルギー設備対策などの原油高騰対策、▽施肥効率向上支援などの肥料高騰対策、▽畜種ごとの経営安定対策を含めた飼料高騰対策、▽生産コストに着目した経営安定対策の確立、▽脱原油と循環型農業への転換対策の5点。
与党の代表あいさつでは保利耕輔自民党政調会長が「日本人が食べるものは日本人が作るという大原則を崩してはならない」として8月末に決定する政府の緊急経済対策のなかに農業支援の緊急対策を盛り込む検討を進めているとした。また、井上義久公明党副代表は原油などの高騰に対する緊急対策のほか、「食用大豆はすべて国産とする」など自給率向上に向けた戦略目標を国が明確にすることや、耕作放棄地解消と農地集約などを含め「政策確立のチャンス」の時期でもあることを強調した。
また、谷津義男自民党総合農政調査会長は7月末のWTO農業交渉をふまえ、輸出国の主張に立ち向かうには「自給率を65%ぐらいにもっていかなければならない。それが日本の立場を強くする」と強調し、今後の農政の方向として「増産対策に入っていく」として麦、大豆、飼料用米などの増産に「あらゆる水田をフル活用する」支援策を検討していることを明らかにした。
集会では「農家経営の安定を確保する思い切った対策と予算を早急に措置すべき」との緊急決議を採択した。
《決意表明》
「大規模で意欲ある農家ほど大打撃を受けている」
長谷川幸男(JAいわみざわ 会長理事)
長谷川幸男氏 |
原油高騰などによる物価の上昇は、農業者や消費者に大ダメージを与えるとともに、将来の食料不安を駆り立てている。特に北海道のように大規模農家が多いと被害が甚大で、意欲ある農家や生産者ほど打撃が大きい。
全道100万人署名運動をしたり、8月21日に5400人が集まり危機突破総決起大会を開き、現状打破と消費者への現状理解を求めている。消費者への理解を元に経済界とも連携をとり、国策による緊急的支援策の構築を求めていく。
「10aあたり100万円以上の減収」
武政盛博(JA四万十 代表理事専務)
武政盛博氏 |
高知県では8月24日に危機突破決起大会を開き3200人が集まった。これほどの大人数が集まったのは記憶にない。重油が1円値上がると、高知県全体で1億円の経費増になり、実に4年間で80億円の負担増となっている。19年度をもとにするとの10aあたり所得はピーマンで107万円減、ミョウガで125万円減になりそう。所得は130万円だったから、もう離農するしかないところまで来ている。
農家は自助努力を惜しまないし、JAも支援してくれるが、もはや国の支援に期待するしかない。全国の園芸農家が農業を維持できるように経営安定緊急対策を講じてもらいたい。
「欧米のように原料値上がり分が価格転嫁されない」
安武孝之(JA菊池地域 肥育農家)
安武孝之氏 |
37年間の肥育人生の中でオイルショック、口蹄疫、BSEと様々な問題が起きてきたが、現在の飼料価格高騰では、コスト削減に努めてももう限界だ。欧米では原料や資材価格の値上がりは価格転嫁されるらしいが、日本ではそういう話は一切聞かない。
政治に対しては、配合飼料安定供給対策やBSEの対応に併せて、もっと消費者に国産品を愛してもらって食べてもらえるような制度改革を期待したい。