中間取りまとめでは、世界の食料事情が不安定化するなか、食料供給力を強化することが重要になっているとして、耕作放棄地について「農業上重要な農用地区域を中心に」、その再生・利用を追求することが必要になっていると指摘。耕作放棄地の解消を食料供給力強化策の観点から明確に位置づけた。
そのうえで、現場で解消対策を推進するには、担い手や周辺農業者、市町村、JAなど多様な「取り組み主体」がネットワークをつくり、▽復旧後の農地の「利用者」確保とバックアップ、▽導入作物と販路の確保、▽営農可能な状態への土地条件の整備などに、「地域ぐるみ」で取り組むことが重要だとしている。
一方、復旧後の農地の「利用者」については、担い手や周辺農家のほか、特定法人、集落組織、放牧地や採草地として利用する畜産農家、新規就農・定年帰農者などがあげられるとし、とくに都市住民による新規就農の促進のために、どこでどのような農地が借りれれるかを知ることができる農地情報の公開も必要と指摘した。また、不在地主に対しては、農地の利用調整について意向を確認し、その結果をもとにした委任・代理などの方式による集積や一時保全管理を検討する必要があるとする。
◆食料供給力の強化策として
このような解消策のうち研究会の議論で重視されているのが、「導入作物の検討・販路の確保」だ。
中間とりまとめではこれについて独立した章を設け、耕作放棄地解消を実現した取り組み事例をふまえ「極めて重要な要素」と指摘している。
ただし、農地利用者が自らの経営戦略で導入作物の選定と販路確保までを実現するのは難しいとの観点から、都道府県やJAの営農指導員などのバックアップを受けながら、たとえば伝統野菜を振興作物とし周辺農地も含めて産地化、さらに加工も視野に入れ直売所、地元スーパー、学校給食への供給など、栽培から流通・販売までのトータルな取り組みが営農再開後の生産定着には重要と強調した。そしてこれらの取り組みを支援する政策の必要性を提言している。
さらに、導入作物については、食料供給力強化の観点から「米粉・飼料用米や麦、大豆等」と具体的な品目を挙げ、その「生産拡大の支援」を必要な対策として明記した。また、導入作物の適性確認を一定期間支援することや、直売所や加工施設の整備なども耕作放棄地対策の一環として位置づけるべきだとしている。そのうえでこれら支援策をメニュー化して現場に示し、自由に選択できるようにする方向も示した。
22日の研究会では「(耕作放棄地解消策を)国家戦略にもとづく事業として位置づけるべき」、「新規就農者には就農訓練の場も必要」、「なぜ解消が必要か、自給率向上のためという観点をもっと前面に出すべき」「農地所有者の責任をもっと明確に」などの意見があった。9月19日は愛知県で現地検討会を開き、その後、取りまとめ作業に入る予定だ。
【研究会委員の小田切徳美明治大教授の話】
この時期に耕作放棄地に関する研究会をあえて立ち上げたのは、食料自給率の向上に関する国民の関心が高まっていることが背景にあろう。そのため、これまでの営農支援策よりも一歩踏み出した対策を示すことが研究会報告に求められると考えてきた。
耕作放棄地発生の要因はさまざまだが、現場をみると数アール規模の農地の復旧ではなくかなりまとまった面積で、しかも団地化された放棄地での営農再開が求められているのが実態。そのためにはインパクトのある内容で現場に強力なエネルギーを注入するような政策が求められている。農地とその利用者、さらに作付け作物といったさまざまな生産要素がミスマッチだったから耕作放棄が発生したので、それを農外からの参入などによって、新たにマッチィングすればよいという議論もあるが、その方向での解消実現は一部にとどまるだろう。
具体的には今までの枠組みを思い切って超えた、農家が価格メリットを感じられるような生産刺激的な政策や、耕作放棄地解消を約束すればそれに対する報奨金的な交付金などが必要だと考える。「耕作放棄地解消」、「自給率の向上」、そして「農家手取りの増大」の3つを一貫して捉える視点が必要だ。
その点で飼料用米、麦、大豆の生産拡大支援策を耕作放棄地解消策の一環として盛り込む方向に議論が進んできたのは評価できる。また、地域あげての販路開拓を支援する視点も重要だ。ただし、新たな施策を手上げ方式によるモデル事業として実施するだけでは、「耕作放棄地解消対策」を単なる「村づくり対策」に"解消"させてしまうことになりかねない。食料自給力強化との関連で位置づけた国家戦略として具体策を打ち出すべきだろう。