政府与党の合同会議が8月29日に決定した「安心実現のための緊急総合対策」に従い、農水省は08年10月期の輸入麦の政府売り渡し価格の引き上げ幅の特例圧縮を行うと発表した。
今年4月の売り渡し価格は主要5銘柄平均で1tあたり6万9120円だった。10月の価格改定では取引相場の上昇に応じて、本来は23%の値上げをして同8万5000円程度になるところを、値上げ幅を10%に留めて同7万6030円とする。13%の圧縮で生じる負担額は、おおよそ200億円程度になる見込み。この改定が消費者物価指数に与える影響は0.01%ほどだと試算している。
農水省食料貿易課は今回の圧縮について「あくまでも消費者への生活支援が目的であり、メーカーや貿易業者への支援ではない」としているが、来年4月の価格改定は従来どおりで大幅な圧縮をする予定はないため、「わずか6ヶ月だけの対策で、どれほど効果があるのか」と疑問視する声もある。また「輸入穀物の高騰をうけて、価格が安定している米の需要が高まり、食料自給率向上への追い風になっている中で、輸入麦の値上げを抑える政策は矛盾しているのではないか」という見方もある。
農水省の総合食料局では、麦についての関係者や消費者からの相談窓口を設けている。TEL 03(6742)2086。
シカゴ相場の小麦価格は、20年近く1ブッシェル(約35リットル、小麦だと約27.2kg)3ドルほどで推移していたが、国際的な需要の急増と一部輸出国の輸出規制などによって、06年後半から価格が急騰した。
日本政府は輸入麦の政府売り渡し価格を年間固定価格にしていたが、07年4月からは相場連動性に移行した。4月と10月の年2回に価格改定を行い、価格は改定11ヶ月前から3ヶ月前までの8ヶ月の平均買い付け価格を元にして決定する。
昨年4月に24年ぶりに価格が引き上げられ、上げ幅1.3%で同4万8430円になったが、昨年10月にはさらに10%引き上げられて同5万3270円に、今年4月には30%引き上げられて6万9120円となり、今年10月の改定によって1年半で約1.6倍に値上がりすることになる。(関連記事)