8月22日と27日、2回の匿名での情報提供をうけて28日に近畿農政局と九州農政局が立入調査を行い、転売の事実を確認した。その後の調査で、転売した業者がさらに他の業者に転売を繰り返し、最大7度の転売が行われていたことなどがわかっている。転売された事故米穀やその加工品は、全て同社が自主回収する。
同社は平成15年度から20年度までに、全国25都道府県の農政事務所から1779t、商社を通じて743tの合計2522tの事故米穀を購入し、その一部を食用として転売していた。
同社が転売した事故米穀の8割以上がMA米で、残留農薬基準を超えた0.05ppmのメタミドホスが検出された中国産もち米800t、殺虫剤アセタミプリドが検出されたベトナム産うるち米598t、発ガン性が非常に高いカビ毒のアフラトキシンB1が発生したアメリカ産や中国産などのうるち米9.5tが含まれている。
メタミドホスが検出された800tのうち295tは九州の仲介業者などを通じて、米穀販売業者や穀粉製造メーカーなどに販売し、アフラトキシンB1が発生した9.5tのうち4tほどは鹿児島の酒造メーカー2社と福岡の肥料会社などに売却していたことが判明している。アセタミプリドが検出されたものは鹿児島、熊本、福岡などの酒造メーカー6社に販売したが、8日現在で詳しい販売量は不明。
農水省には昨年1月にも匿名での情報提供があり、受入数量と販売数量の確認と目視による調査を行ったが、当時は不審な点は見つからなかったという。
これについて白須事務次官は9月8日の定例会見で、「三笠フーズは帳簿を二重につけるなど悪質な台帳の改ざんを行っていたため、転売の事実を見抜けなかったのではないか」と述べた。また「再発防止のため監視体制の強化をすすめ、事故米穀の転売防止策や売却方法の再検討なども行っていく」としている。
農水省は9月8日から、過去に事故米穀を工業用として購入した実績のある全国の加工・販売業16社や商社などを対象に、事故米穀を適切に使用・販売しているかなどの一斉点検を開始した。
◆MA米の管理体制などにも不備
三笠フーズが転売した事故米穀は、8割以上が食用として輸入されたMA米だ。
米を輸入する際、水をかぶったり熱でやけたりして、食べても健康に問題はないが品質が劣化したものや、残留農薬が基準値を超えるもの、カビが発生したものなどは「事故米穀」となる。
事故米穀となった米は、輸入業者が「積戻し」「廃棄処分」「非食用に転化」の3つのうちから対応を選択することになる。これらのうち積戻しと廃棄処分については、国内に輸入されたものと見なされないためMA米実績には算入されないが、非食用に転化した場合はMA米として計上される。
過去5年間で事故米穀と認定された米のうち、おおよそ9000tが非食用に転化して輸入された。しかし、そのほとんどはエサ米として売却しており、工業用として売却されるものはあまりないという。
同社は政府から事故米穀を非食用として購入した以外に、商社からも購入していた。住友商事からはカビの発生したタイ産うるち米145tを非食用として直接購入し、双日からはアセタミプリドの検出されたベトナム産米598tを仲介業者を通じて購入していた。
事故米穀の購入は一般入札か随意取引で行われるが、入札のための施設要件や業態要件は特になく、どんな業者でも購入が可能となっている。また事故米穀の取り扱いについては、購入直後に農政局の立会いで検査をするが、その後の監視・検査制度などはない。
また、MA米の転売については、以前は無届けで自由取引だったが、現在は届出をする必要があり、違反者には取引資格停止などの罰則が科せられる。三笠フーズは事故米穀を非食用のMA米として購入し、複数の仲介業者や加工・卸売業者などに転売したが、さらに他の業者への転売が繰り返し行われていた。